研究課題/領域番号 |
17K05822
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小松崎 秀人 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (00280347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コバルト錯体 / トリスピラゾリルボレート / 硫黄酸化 / チオラト配位子 |
研究実績の概要 |
トリスピラゾリルボレート配位子(Tp)のピラゾールの3位および5位にトリフルオロメチル基やフェニル基を導入したコバルト(II)o-アミノチオフェノラト錯体と酸素との反応については反応の進行は確認できなかった。立体的影響と電子的影響により、コバルト(II)上での酸素活性化能が変化することがわかった。Tpにイソプロピル基を導入すると、コバルト(II)にo-もしくはp-アミノチオフェノラト配位子のどちらを結合させても酸素との反応は進行し、C-S結合が開裂した硫黄酸化生成物(二核コバルト(II,II)μ-スルファナト錯体)やCo-S結合開裂によるジスルフィド化合物が得られることが分かっている。o-アミノチオフェノラト錯体を低温下で酸素と反応させると、硫黄酸化物やジスルフィドとは異なる化学種の生成を確認できた。現在、その単離同定を進めているが、C-S結合が開裂前の硫黄酸化有機配位子を有する錯体が得られたと推測している。また、p-位の置換基を種々変化させて酸素との反応を調査すると、p-ニトロチオフェノラト錯体では、溶媒選択性が確認され、アセトニトリルを用いると容易に酸素と反応するが、トルエンやジクロロメタンを用いると反応は進行しなかった。強い電子求引基であるニトロ基を用いても酸素活性化が進行するのは、既報のニッケル錯体の反応系をもとに考えると、アセトニトリルがコバルト(II)に配位することで、p-ニトロチオフェノラト配位子が原子価互変異性によりチオンに近い構造に誘導されたと考えられる。p-ニトロチオフェノラト錯体においても酸素と反応させると硫黄原子は酸素添加を受けている。ジスルフィドの生成割合よりは低いものの、スルフィン酸やスルホン酸への酸化が進行していた。同様に、無置換チオフェノラト配位子、p-メチルチオフェノラト錯体においても、一部スルホン酸の生成が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Tp配位子のピラゾール3位および5位にイソプロピル基、トリフルオロメチル基、そしてフェニル基を導入したコバルト(II)o-アミノチオフェノラト錯体を合成することができた。置換基の種類により、酸素との反応が大きく変化することを明らかにできた。イソプロピル基を有するTp配位子を用いたo-もしくはp-アミノチオフェノラト錯体が酸素と反応すると、アミノチオフェノラト配位子のC-S結合が開裂し硫黄が酸化されたμ-スルファナト二核錯体やCo-S結合開裂による二量化したジスルフィド化合物が得られた。o-アミノチオフェノラト錯体を低温下で酸素と反応させると、C-S結合が開裂前の硫黄酸化有機配位子を有する錯体の可能性が高く、この同定により硫黄酸化を触媒する酵素反応の解明に繋げられると考えられる。また、p-位の置換基を種々変化させたチオフェノラト錯体の合成と酸素との反応の系統的調査も展開できた。酸素との反応が溶媒選択的に進行することや、ニトロ基を有するときには、溶媒のアセトニトリルがコバルト(II)に配位することで原子価互変異性が生じることが分かってきた。p-ニトロチオフェノラト錯体においても酸素と反応させると硫黄原子は酸素添加を受け、ジスルフィドの生成割合よりは低いものの、スルフィン酸やスルホン酸への酸化が進行することが確認できた。同様に、無置換チオフェノラト配位子、p-メチルチオフェノラト錯体においても、一部スルホン酸の生成が示唆された。 アミノエタンチオラト配位子を有するコバルト(II)単核錯体の合成と酸素との反応も行うことができた。酸素との反応ではμ-スルファナト二核錯体の生成が確認された。同様に、システインエステル結合錯体の合成も検討したが、生成物の単離精製が困難であったため酸素との反応は行っていない。検討を断念したものもあるがその他は当初の計画以上の成果が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は反応生成物の収率の確認と、中間種の単離条件の確立および同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験の反応試薬購入もしくは研究成果発表に関して使用したい。
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