研究実績の概要 |
トリスピラゾリルボレート配位子(Tp)のピラゾールの3位および5位にイソプロピル基を導入したコバルト(II)p-置換チオフェノラト錯体(置換基=OMe、Me、H、Cl、NO2)を合成し、酸素分子との反応について検討を行った(アセトニトリル溶媒、298K)。反応速度は置換基の種類で変化することを確認することができ、メトキシ基(OMe)やメチル基(Me)のような電気供与性の時に反応は速く、クロリド(Cl)やニトロ基(NO2)のような電子求引性基の時にはゆっくりと反応が進行することが分かった。この反応を電子スペクトルにより追跡を行いった結果、いずれのコバルト錯体でも擬一次反応として直線性が得られた。擬一次反応速度定数は電子供与性基で大きく、電子求引性基では小さくなった。 チオラト錯体の酸素活性化における置換基効果について、ハメットプロットを用いて検討を行った。擬一次反応定数を縦軸、ハメット置換基定数(σ+)を横軸にしてプロットすると、NO2基以外は直性関係があることが判明した。p-ニトロチオラト錯体では、コバルト(II)中心にアセトニトリル溶媒が配位することで、ニトロ基とチオフェノラト間のキノイド型共鳴構造に寄与するものと考えられる。 酸素と反応すると、二核コバルト(II,II)ビス-μ-ヒドロキシド錯体や、μ-カルボナト錯体が生成してい確認できた。また、チオラト部がラジカル的に開裂し、二量化したジスルフィドの収率が高いが、硫黄原子への酸素添加反応も進行していることを確認できた。収率については大きな差はないことを明らかにすることができた。
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