研究課題
狭いエネルギーギャップ(<1.0 eV)を持つ有機分子は、近赤外領域に効率的な光吸収特性を示す。近赤外光は身近に利用できるエネルギー源であり、また高い生体透過性という特徴を持つ。光熱電変換素子は光から熱を介して電気エネルギーを出力する素子である。次世代の光熱電変換素子には、素子構成の点からp型及びn型特性の両立とともに、近赤外領域から赤外領域にわたるエネルギーを有効活用する技術が要求されている。本年度はチエノイソインジゴ骨格にキノイド構造を導入したポリマー化が可能な新規骨格の開発を試みた。キノイド構造から芳香族性の獲得によるビラジカル性の獲得を狙う分子設計を行った。一般的にキノイド構造は不安定であるため、チエノイサチン構造の末端に芳香族性のベンゼン環及びチオフェン環でキャップすることでチエノイソインジゴ骨格にキノイド構造を導入することに成功した。末端のベンゼン環やチオフェン環をクロスカップリング反応可能なブロモ体とすることでポリマー化が可能となる。合成したチエノイソインジゴのキノイド型モノマーを用いて、チエノイソインジゴ及びチエニルジケトピロロピロールモノマーと組み合わせたポリマーを合成した。これらのポリマーの光学特性や酸化還元特性を調べた結果、近赤外領域に吸収極大を持つエネルギーギャップの電子構造を明らかにした。また電界効果トランジスタを作成し、キャリア輸送特性を調べたところ、どちらのポリマーもホール輸送特性を示し特にチエノイソインジゴ骨格からなるポリマーは、ゲート電極からのキャリアドープなして比較的高い電気伝導度を示した。さらに光熱変換素子を作成し、近赤外光レーザーを照射することで光エネルギーから熱エネルギーへの変換を観測することに成功した。素子作成条件を最適化して起電力を測定することを試みている。これらの成果をまとめ学術論文に発表する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件)
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巻: 2020 ページ: 2001215 (1-13)
10.1002/smll.202001215
ACS Appl. Electron. Mater.
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