研究課題
これまでに独自に開発した水素イオンビーム照射装置を用いて、低温での水素イオンビーム照射および温度可変in situ物性測定を行った。また、水素ガスを重水素ガスに置換することにより、重水素のドーピングも行った。酸化亜鉛や酸化チタンなどの機能性酸化物薄膜を中心に、高濃度水素ドープによる物性制御を行った。7 Kの低温で5keVの水素イオンを照射することにより、ZnO薄膜の抵抗が約6桁も減少することを見出した。一方、同じく7 Kの低温で5keVの重水素イオンを照射したところZnO薄膜の抵抗は1桁程度しか変化せず、巨大な同位体効果を示すことが明らかになった。さらに、水素(重水素)イオン照射後に室温まで昇温することにより、抵抗が1桁(5桁)減少した。すなわち、昇温による抵抗減少にも巨大な同位体効果が現れた。この特異な現象は、イオン照射により準安定な(重)水素のトラップサイトが出来るためと考えられ、昇温により(重)水素が拡散し、侵入型水素となり電子をドープすると考えられる。ex situでのSIMS(二次イオン質量分析法)による分析やホール効果測定、およびイオンビームの加速電圧依存性などの詳細な測定によって、それを支持する結果を得た。RFスパッタ装置を用いてルチルTiO2の薄膜作製に成功した。それを用いて水素イオンビーム照射とin situ伝導度測定を行った。室温での水素ドープによってTiO2の顕著な抵抗減少を確認した。その後、低温50Kまたは100Kでの水素イオンビーム照射により、抵抗が増加することや、温度履歴と低温水素ドープにより抵抗のスイッチングが出来ることを見出した。
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