研究課題/領域番号 |
17K05833
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津江 広人 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30271711)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機結晶 / 気体分子認識 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
気体分子の吸着状態を解明することは,新たな多孔性材料の開発に向けて重要な知見を与えることが期待されるが,気体吸着状態を原子レベルで可視化した例は多くない.そこで本研究では,(A)気体吸着状態を簡便かつ安全に結晶構造解析するための結晶マウントピンを開発し,これを用いて(B)研究代表者らが調製した有機結晶が発現する気体分子の認識現象のメカニズムを解明する. 交付2年目である平成30年度においては,上記のAとBの2項目について研究を行った. (A)気体分子を簡便かつ安全に封入するための結晶マウントピンは市販されていないため,交付初年度に引き続き,本研究において独自の開発を進めた.昨年度に作成したプロトタイプでは,ガス漏れが起こることが判明したことから,その仕様を大幅に変更した.その結果,改良版においても,結晶を充填したガラスキャピラリー内部を真空排気するとともに,所望のガスを簡便に導入できることを確認した.また,この改良版では,ガス漏れが起こらないことを確認した. (B)当研究室でのこれまでの研究から,興味深い気体吸着挙動を示す有機結晶が見つかっている.そこで,上記Aで開発した改良版の結晶マウントピンを用いてX線結晶構造解析を行い,有機結晶中に気体分子が吸着した状態を原子レベルで解析することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発する結晶マウントピンは市販されていないため,交付初年度にそのプロトタイプとなるものを製作した.しかし,前述のとおり,プロトタイプでは,ガス漏れが起こることが明らかとなった.そこで交付2年目である平成30年度においては,その設計方針の再検討を行い,改良版の製作を行った.このような結晶マウントピンの前例はなく,模倣できるものは皆無のため,改良版の設計,部品の製作,ならびに使用するバネやO-リングなどの選定に大幅な時間を要した.そのため,当初の研究予定よりもやや遅れている状況ではあるが,この改良版の結晶マウントピンでは,真空漏れやガス漏れが起こらないことを確認できたことから,この改良版を用いて,有機結晶の気体吸着状態についてのX線結晶構造解析を試みた.導入するガスの圧力ならびに測定温度を種々検討した結果,現時点では一例のみながら,気体分子の吸着状態を解析することに成功した.現在,この改良版の結晶マウントピンを用いて,別の有機結晶についても気体吸着状態の結晶構造解析を進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
当研究室でのこれまでの研究から,ジペプチド誘導体の有機結晶が興味深い気体吸着挙動を示すことが見つかっている.そこで今後は,周辺化合物の合成を行い,気体吸着挙動を評価する予定である.また,本研究で独自に開発した結晶マウントピンのさらなる改良を進めるとともに,有機結晶の気体吸着状態についての結晶構造解析を行って,気体吸着挙動の発現メカニズムを詳細に解析する予定である.
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