研究課題
気体分子の吸着状態を解明することは,新たな多孔性材料の開発に向けて重要な知見を与えることが期待されるが,気体吸着状態を原子レベルで可視化した例は多くない.そこで本研究では,(A)気体吸着状態を簡便かつ安全に結晶構造解析するための結晶マウントピンを開発し,これを用いて(B)研究代表者らが調製した有機結晶が発現する気体分子の認識現象のメカニズムを解明することを目的とした.補助事業期間において,上記のAとBの2項目について研究を行った.(A)気体分子を簡便かつ安全に封入するための結晶マウントピンは市販されていないため,本研究において独自に開発を行った.初年度の平成29年度に作成したプロトタイプでは,ガス漏れと真空漏れが起こることが判明したため,平成30年度に,その設計方針の再検討を行い,改良版の製作を行った.平成31年度・令和元年度では,さらに改良を加えた結果,ガス漏れや真空漏れが起こさず,約5気圧まで耐える再改良版を作成することできた.このことを受けて,最終年度である令和2年度においては,使用するキャピラリー,接着剤,O-リング,バネなどについて,さらなる改良を加えた.その結果,新たに作成した再々改良版では,1気圧以下の条件も安定に維持できるようになった.(B)本研究で独自に開発した結晶マウントピンを用いて,研究代表者らが調製した有機結晶について,気体雰囲気下でのX線結晶構造解析を行った.その結果,有機結晶中に気体分子が吸着した状態を原子レベルで解析することに成功した.また,その原子座標から理論計算を行うための入力ファイルを半全自動的に作成するソフトウェアを開発して,気体吸着状態の理論面からの解析作業を円滑に進めるための環境を整備した.現在,気体吸着挙動の発現メカニズムについて,理論面からの解析を進めているところである.
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 備考 (1件)
Chemistry―A European Journal
巻: 27 ページ: 1648-1654
10.1002/chem.202001382
https://www.orgmater.h.kyoto-u.ac.jp/