研究実績の概要 |
非線形性の高い自己駆動系を構築し、分子レベルから時空間パターンを制御よく発現するために次の研究を行った。 (1)両親媒性分子による光制御:2,2-bis(2-chlorophenyl)-4,4',5,5'-tetraphenyl-1,2'-biimidazole(o-Cl-HABI)は、紫外線照射により二量体から単量体に可逆的に変化することが知られている。またこの分子は、表面圧を変えることができるので、水面滑走する自己駆動系の運動制御するための分子膜として活用することができる。そこで、o-Cl-HABI分子膜上に、表面張力差を駆動力として自己駆動する樟脳円板を浮かべ、光照射で運動制御する系を構築した。その結果、往復運動する条件に紫外線を照射するとランダム運動に変化することを見い出した。このような光照射による運動モードスイッチングの発現機構を、二量体であるo-Cl-HABI、単量体であるTPIR、及び駆動体の樟脳の表面圧に基づいて考察した。 (2)長さを持つ2個の振り子運動を示す自己駆動モーターによる同期運動:従来の系は質点について行ってきたが、本研究では、長さを持つ自己駆動体をカップリングさせた系について実験と理論の両面から研究を行った。具体的には、アセトン(駆動力源)を含ませたニトロセルロース製の紐の一端を水相の壁面に固定し、もう一端をフリーにして水面に浮かべたところ、往復運動することを見い出した。更に紐の先端と中心では位相差も周期振動することから、長さを生かした自己駆動系であることを確認した。さらに2本の紐をカップリングしたところ、ヒモの長さに依存して、同相、同相と逆相の共存、非同期の3つのパターンを見い出した。そして共存領域では、初期値で同相または逆相が選択されれた。これら特徴的な往復運動と同期現象を反応拡散方程式と運動方程式を結合した数理モデルを使って定性的に再現した。
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