研究課題/領域番号 |
17K05838
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 浩昭 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (30244221)
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研究分担者 |
蔵脇 淳一 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (10170078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 有機無機複合材料 / 樹状分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、樹状分子-金属ナノ粒子複合体を調製し、その柔軟性の高い疎水性内部空間を利用して、分子量選択的な疎水性分子の可溶化と、ユニークな選択性を示す有機合成反応触媒としての利用を検討することを目的としている。平成30年度の研究実績は以下の通りである。 1.平成29年度までに合成した、末端部分にアルキルスルファニルアニリンを有するポリアミドアミン(PAMAM)型樹状分子を塩基触媒として用いたDiels-Alder反応を検討した。第0世代から第3世代まで、4種類の化合物の触媒活性を評価し、構造と触媒活性の関係について検討した。世代数にかかわらず、ポリアミドアミンのアミン部分は塩基触媒としてほとんど機能しないことを確認した。 2.上記化合物を銀ナノ粒子上に固定化したものを塩基触媒として用いたDiels-Alder反応を検討した。第0世代から第3世代まで、4種類の化合物の触媒活性を評価し、構造と触媒活性の関係について検討した。樹状分子-銀ナノ粒子複合体の表面を加水分解してカルボキシラートとした水溶液中で、塩基触媒Diels-Alder反応が進行することが確認された。カルボキシラートを有する樹状分子自身も触媒活性を示したが、銀ナノ粒子との複合体の方が、より高い活性を示した。 3.樹状分子-銀ナノ粒子複合体に対する疎水性分子の取り込み実験のために、疎水性の抗腫瘍性化合物としてジヒドロナフタレンリグナン類の合成を行った。H29年度に合成したhyptininについては、報告されている構造が誤りであることを分光学的研究から確認している。今年度は、正しい構造を合成化学的手法で確認した。併せて、類似した構造を持つジヒドロナフタレンリグナン類の合成を行い、その構造研究を行った。 4.緑茶および紅茶に含まれるタンニン類を天然由来樹状分子と見立て、茶抽出物を利用した金属ナノ粒子の調製法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3つの達成目標として、1.樹状分子-金属ナノ粒子複合体の調製法の開発、2.樹状分子-金属ナノ粒子複合体の内部疎水性空間への疎水性分子取り込みの評価、3.樹状分子-金属ナノ粒子複合体の触媒活性の評価、を挙げている。 H29年度に1.を確立しており、H30年度は3.について検討を行い、ポリアミドアミン(PAMAM)型樹状分子-銀ナノ粒子複合体が、塩基触媒Diels-Alder反応の触媒として機能することを確認したことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。 しかしながら、基質が複合体の内部疎水性空間へ取り込まれて反応が進行しているか否かは未だに確認できていない。本計画の主要部分は、疎水性空間内部での取り込みと反応の促進であり、H31年度・令和元年度は、この点について研究を進める予定である。 平成30年度は、緑茶および紅茶に含まれるタンニン類を天然由来樹状分子と見立て、茶抽出物を利用した金属ナノ粒子の調製についても検討し、安定な金および銀ナノ粒子の調製法を開発した。得られた茶抽出物-金属ナノ粒子複合体は、強い抗菌性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の目標2.樹状分子-金属ナノ粒子複合体の内部疎水性空間への疎水性分子取り込みの評価を行う。平成30年度に確認された、リアミドアミン(PAMAM)型樹状分子-銀ナノ粒子複合体の触媒活性が、樹状分子内部に取り込まれた分子間の反応によるものか否かを明らかにする。 また、樹状分子-銀ナノ粒子複合体への疎水性分子取り込み能を評価するための分光学的検討を行う。標的とする疎水性分子としては、疎水性蛍光標識分子を利用し、取り込み能の評価方法を確定した後、疎水性の抗腫瘍性化合物の取り込みを検討して、樹状分子-銀ナノ粒子複合体の薬物輸送システムとしての可能性を評価する。
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