研究課題/領域番号 |
17K05839
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
伊與田 正彦 首都大学東京, 理学研究科, 客員教授 (50115995)
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研究分担者 |
大谷 裕之 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (30213763)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 超分子機能材料 / ナノ集積体 / モルフォロジー / アクチュエータ |
研究実績の概要 |
近年、活発な研究が展開されているナノ構造体の研究を、巨大有機環状共役系が作る超分子集積体を用いて行うことが本研究の目的である。具体的には、種々の巨大環状共役系を合成して、巨大環状分子が作り出す超分子集積体のモルフォロジーをコントロールすることにより、熱・光・有機溶媒蒸気に応答するナノ集積体を創製して、分子レベルでのスイッチ・デバイス機能を発現させることを目的とした。平成30年度は、次の3課題に取り組んだ。(1) 巨大環状分子が作り出す超分子集積体のモルフォロジーをコントロールして、光に応答する単分子膜を構築し、そのSTM観察から光刺激を用いる形状変化を直接観測した。この形状変化は、光の波長を変えることによって、可逆に行うことが出来た。(2) 剛直な骨格をもつ巨大環状共役分子が、そのアルキル置換との相互作用によって“誘導適合”型積層を示し、その結果、多彩なモルフォロジー変化と熱刺激応答性を示すことを見出した。(3) 大環状オリゴチオフェン6量体を用いてベイポクロミズムを示すと同時に、可逆な形状変化を示す系を作り出した。この研究は、分子レベルでのアクチュエータの作成に応用可能である。また、この研究は、ナノ構造をもつファイバーが有機溶媒を取り込む際に形状変化を示すことを明らかにしたもので、従来の研究とは異なる独創的なものである。さらに、溶媒刺激による形状変化は、小エネルギーによって達成できるので、現在、さらにその詳細を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度において (1) 巨大環状分子が作り出す超分子集積体のモルフォロジーをコントロールして、光に応答する単分子膜を構築し、そのSTM観察から光刺激による可逆な形状変化を達成し、(2) “誘導適合” 型積層を示すアルキル置換巨大環状分子の多彩なモルフォロジー変化と熱刺激応答性を見出し、さらに (3) 大環状オリゴチオフェン6量体を用いてベイポクロミズムを示すと同時に、可逆な形状変化を示す系を作り出し、その分子レベルでのアクチュエータ機能の発現を示すことができた。これらの結果から、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者の研究は順調に進んでいるので、令和元年度は平成30年度の研究の継続と巨大環状分子のアクチュエータ機能の確立、および巨大環状分子の近赤外蛍光について調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究は予定通り順調に進んでいるが、最終年度(次年度)の予算配分額が少ない。これに対して、当該研究を進めている段階で巨大環状共役系のカチオン種の新規機能を見出したので、翌年度の予算だけでは研究費が不足すると予想された。そこで、当該年度の研究費を節約して、翌年度に使用できるようにした。
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