研究課題/領域番号 |
17K05842
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研究機関 | 千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
坂井 賢一 千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (50342788)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光 / クロミズム / 水素結合 / 励起状態分子内プロトン移動 |
研究実績の概要 |
本研究では、外部からの複数の刺激(信号)に応答して蛍光特性が多彩に変化する新規ESIPT(励起状態分子内プロトン移動)型蛍光色素の開発を目指している。H30年度は、主に以下2つの系を対象に研究を進めた:(1)プロトンドナーもしくはプロトンアクセプターにESIPT性を付与した2成分蛍光制御系の構築。(2)水分子を認識して蛍光特性が劇的に変化するアントラセン連結型ESIPT色素のメカニズム解明。前者(1)は外部刺激によって分子間でのプロトン移動が誘起され、それが引き金となってESIPT色素の蛍光特性の変化を期待した系で、今回新たに合成したスルホン酸基を導入したESIPT色素と種々の塩基性物質との2成分系を調整した。その結果、それら粉末を混合することでESIPT色素から塩基性物質へプロトン移動が確認され、また、塩基性物質の種類によってはESIPT色素からのプロトンの脱離が2段階で起こることも明らかにした。生理活性物質である塩基性のヒスタミンでも同様の反応が進行し、微量のヒスタミンを感知出来るセンサーとしての可能性を示すことが出来た(J. Phys. Chem. C に報告済み)。現在はESIPT骨格としてサリチル酸に着目した2成分系の構築を進めている。一方、後者(2)は元々ESIPT色素のキャリア輸送性を向上させて、電子とプロトンによる複数入力に応答した色素開発を目指したものであったが、その色素が水分子を認識することでESIPT効率を大幅に向上させ、ストークスシフトの大きな赤色蛍光を示すことを見出した。水によりESIPTが阻害される一般的なESIPT色素とは正反対の特性で、そのメカニズムを明らかにするため、色素の類似体を合成し蛍光特性を比較した。結果、水の感知にはアントラセン骨格が必須で、またアントラセン9,10位へのフェニル基の導入は感度を増大させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度も研究成果を論文1報に纏めることが出来たのでおおむね順調である。水センサーのように当初の目的とは異なるが、大変興味深い現象を見い出すことが出来たのは収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところはおおむね順調に研究が進んだので、成果を論文2報に纏めることが出来た。最終年度は次の展開に繋がるような新しい芽を見出して行きたいと考えており、現在最も精力的に進めているのはサリチル酸をベースとした2成分蛍光制御系の開発である。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおよそ予定通り使用した。(残額は423円)
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