研究課題
1、 前年度、[Ni(ddds)2]単結晶のDACを用いた高圧下単結晶構造解析を行った結果、6 GPa付近において結晶中、二量体内の Ni-Se 結合が消失し、Ni-Ni 結合が新たに生成する構造相転移が起こることを発見した。今年度はさらに詳細な構造測定を行った結果、上述の相転移が 3.1 GPaで発生し、11 GPaではNi-Ni 結合以外に新たにSe-Se結合が一分子おきに生成することを発見した。また、この二段階の構造相転移が可逆的に起こることも判明した。2、中心金属の置換による高圧物性の違いが生じた原因を明らかにするため、 同型構造を有する[M(dddt)2](M=Ni, Pd)の高圧下単結晶構造解析を行なった。二つの塩のa軸, c軸と体積は圧力の増加とともに小さくなり、β角度は加圧とともに一旦小さくなってから大きくなる。Ni塩において、b軸が4.9 GPaより低い圧力では圧力増加とともに小さくなるが、さらに高い圧力ではほとんど圧力依存性を示さない結果が得られた。測定した結晶構造を用いたDFTバンド計算ではギャップが加圧ともに小さくなり、電気抵抗測定結果とほぼ一致した結果が得られた。一方、Pd塩においては、6 GPaの結晶構造を用いたバンド計算ではディラックコーンが確認され、8 GPa以上の圧力では二つの結晶学的に特立した分子の内、一つの分子末端のエチル基に乱れが現れ、高圧下での電気抵抗の上昇の原因であることが判明した。3、圧力下ディラック電子系を発見した単一成分分子性結晶[Pd(dddt)2] の配位子 dddt の外側のSを Seに置換した配位子 dsddt を用いて、[Pd(dddt)2]と同型構造を有する[Ni(dsddt)2]単結晶を作製し、常圧下での結晶構造と高圧下電気抵抗測定を行った。
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