研究実績の概要 |
前年度に見出した不斉反応について、キラルアミノフェノール構造を変化させて立体選択性の調査を行った。アミノ基を Boc 基で保護したものや、カルボニル基を除去したものを用いて反応を試みたが、いずれの場合も大きくエナンチオ選択性が低下したため、アミノフェノールの水酸基、アミノ基およびカルボニル基はいずれも本反応の不斉発現に必須であることが明らかとなった。また、電子供与性基をベンゼン環に導入したものや電子求引基を導入したものでは反応効率およびエナンチオマー過剰率がともに低下したため、アミノフェノールのベンゼン環は他に置換基をもたないのものが本反応に適していることが明らかとなった。さらに、アミノフェノールのアミド基の効果を調査するため、種々のアルキルアミド構造をもつアミノフェノールを用いて反応を試みたところ、第三級アミド構造を有するものや、環状構造をもつものを用いると、一様に良好なエナンチオマー過剰率の生成物を与えた。一方、第二級アミドについては、メチル基を導入したものでは 32%,53% ee にて生成物が得られたのに対し、嵩高いtert-ブチル基を導入したものでは収率 96%、エナンチオマー過剰率 75% ee と高収率かつ良好なエナンチオ選択性が確認された。続いて、アミノフェノールのアミド上に種々の芳香環を導入し、反応を試みた。単純なフェニル基をもつものではエナンチオ選択性が大きく低下したが、オルト位に嵩高いイソプロピル基を導入したものを用いると、98%, 87% ee にて生成物が得られ、極めて高いエナンチオ選択性で反応が進行することが明らかとなった。以上より、芳香環の置換基がアミド付近を遮蔽する構造をもつアミノフェノールを用いると、高エナンチオ選択的な反応が進行することが明らかとなった。
|