研究課題/領域番号 |
17K05859
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中 寛史 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (70431517)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水 / 水和反応 / 脱水反応 / ニトリル / アミド / 触媒反応 / パラジウム / 水移動型反応 |
研究実績の概要 |
水を分子間で移動させる水移動型反応の合成化学における有効性を調査した.具体的にはアミドとパラジウム触媒を用いたニトリルの水和反応と,ニトリルとパラジウム触媒を用いたアミドの脱水反応の 2 反応について,反応の基本的な性質と適用範囲の一部を明らかにした. まずアルキルニトリルの水和反応について,反応パラメーター (アミドの置換基,触媒構造,反応条件) を最適化し,本反応がアルキルアミドとカチオン性のパラジウム触媒を用い,微酸性条件下で効率よく進行することを明らかにした.アルキルアミドが好ましい理由は本反応が平衡反応であるためだと考察できる.また,カチオン性のパラジウム触媒と微酸性条件が好ましかったことから,反応の触媒活性種はカチオン性のパラジウム種であることが示唆された.以上に加えて用いるアミドとパラジウム触媒が反応溶媒によく溶解することも,望みのニトリルの水和反応が進行するために必要であることも分かった.さらに基質適用範囲を精査したところ,塩基性条件で分解するニトリルであるシアノヒドリン類にもこの水和法が有効であることが分かった. またアミドからニトリルへの脱水反応についても検討した.官能基化されたプロリン由来のアミドの脱水をモデル反応として最適な反応条件を明らかにした.さらに天然に存在するアミノ酸から誘導できる 20 種類のアミノ酸アミドの脱水を試みたところ,そのうち 16 種類のアミノ酸アミドについて,対応するアミノニトリルが収率よく得られることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニトリルの水和反応とアミドの脱水反応について当初目標としていた条件最適化と初期的な基質適用範囲の調査を達成したため.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに進行する.ニトリルの水和反応についてはシアノヒドリンの水和反応を中心に,合成反応として利用可能なレベルまで研究を進める.またアミドの脱水反応については,そのままでは適用ができなかったアミノ酸アミドに保護基を導入し,アミドの脱水反応が進行する条件を探索する.さらにこの脱水反応による C末端ニトリル含有ペプチドの合成を目指す.
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