研究課題/領域番号 |
17K05860
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
八谷 巌 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50312038)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イミン / ヨウ化チタン / 含窒素 / ヘテロ環 / β-ラクタム |
研究実績の概要 |
アミノ酸、β-ラクタム系抗生物質をはじめとする含窒素化合物を効率的に合成するための新規合成反応の開発は強く望まれている。研究代表者らは、三重結合およびイミドイル基を有するアルキニルイミンへのケテンシリルアセタールの共役付加反応により、イミドイルシクロブテノンの合成単離に成功し、引き続く不斉還元を経るキラルβ-ラクタムの新規合成法を開発している。一方、ヨウ化チタンの還元能力およびヨードチタン化能力に着目し、それらを活用する選択性の高い炭素-炭素結合形成反応も開発している。さらに、イミドイル基を有する新規ジアルキニルイミンを合成し共役付加反応を検討した結果、2当量のケテンシリルアセタールがβ位とδ位にそれぞれ付加したタンデム1,4-1,6-二重求核付加反応が進行することも見出している。そこで平成29年度はイミドイル基を有する新規ジアルキニルイミンおよび新規反応性化学種であるチタンイミドイルヨージドの創出とそのチタン化学種を用いる新規含窒素化合物合成を検討した。その結果、様々な置換基を有するジアルキニルイミンへのケテンシリルアセタールの共役付加反応によって合成したイミドイルシクロブテノンに、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを作用させところ、イミノ基選択的還元反応が進行し、良好な収率で様々な置換基を有するアミノシクロブテノンが得られることを見出した。また、得られたアミノシクロブテノンの熱的開環-閉環反応によって、多官能基を有するβ-ラクタムがcisおよびtrans選択的に得られることも明らかにした。さらに、様々なN-(2-シアノフェニル)ベンズアミド誘導体にヨウ化チタンを反応させることによって、4-ヨードキナゾリンが良好な収率で得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な置換基を有するジアルキニルイミンを合成することに成功し、それらを用いた1,4-1,6-二重求核付加反応により、様々な置換基を有するアルケニルイミドイルシクロブテノンを良好な収率で得られることを明らかにした。さらに合成したイミドイルシクロブテノンに、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いたイミノ基選択的還元反応によって、良好な収率で様々な置換基を有するアミノシクロブテノンが得られることを見出した。また、得られたアミノシクロブテノンの熱的開環-閉環反応によって、多官能基を有するβ-ラクタムがcisおよびtrans選択的に得られることも明らかにした。さらに、種々反応条件を検討した結果、様々なN-(2-シアノフェニル)ベンズアミド誘導体にヨウ化チタンを反応させることによって、4-ヨードキナゾリンが良好な収率で得られることを見出した。 このように目標としたイミドイル基を有する新規ジアルキニルイミンおよび新規反応性化学種であるチタンイミドイルヨージドを用いる新規含窒素化合物合成に成功し、平成30年度は高脂血症治療薬Ezetimibeの全合成、およびチタンイミドイルヨージドを経る6員環含窒素ヘテロ環化合物合成の知見を5員環含窒素ヘテロ環化合物合成へ応用できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成29年度に得られた知見をもとに、ジアルキニルイミンのタンデム1,4-1,6-二重求核付加反応を鍵反応に用いる高脂血症治療薬Ezetimibeの全合成、およびチタンイミドイルヨージドを経る6員環含窒素ヘテロ環化合物合成の知見を5員環含窒素ヘテロ環化合物合成へ応用する。具体的には以下の計画による。 (1)タンデム1,4-1,6-二重求核付加反応を鍵反応に用いる高脂血症治療薬Ezetimibeの全合成:ジアルキニルイミンのタンデム1,4-1,6-二重求核付加反応によりアルケニルイミドイルシクロブテノンを合成する。次にアルケニルイミドイルシクロブテノンを用い、申請者が開発したイミノ基選択的不斉還元によってキラルなアミノシクロブテノンを合成する。合成したキラルなアミノシクロブテノンの熱的開環-閉環反応によってキラルなβ-ラクタムを合成した後、数段階を経て高脂血症治療薬Ezetimibeの全合成を検討する。 (2) 2-ヨードピロール合成法の開発および高脂血症治療薬Lipitorの全合成:様々な置換基を有するニトリルにヨウ化チタンを反応させることによって調製したチタンイミドイルヨージドの環化反応を経る2-ヨードピロールの合成を検討する。開発した2-ヨードピロール合成を鍵反応に用いる高脂血症治療薬Lipitorの全合成を検討する。 (3)5-ヨードイミダゾール合成法の開発:様々な置換基を有するニトリルにヨウ化チタンを反応させることによって調製したチタンイミドイルヨージドの環化反応を経る5-ヨードイミダゾールの合成を検討する。 計画をさらに推進するために、各研究テーマに参加する大学院生の人数をさらに1名ずつ増員し、平成30年度で研究の進展を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:購入を予定していた試薬が当初予定より低価格で済んだため。 計画:各研究テーマに参加する大学院生の人数を1名ずつ増員し実験数を増やすため、平成30年度ではその実験数の増加分に対応する消耗品に使用する額を少し増加させる。
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