研究課題/領域番号 |
17K05864
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉田 拡人 広島大学, 工学研究科, 准教授 (40335708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ルイス酸性抑制 / 銅触媒 / パラジウム触媒 / メタル化反応 |
研究実績の概要 |
有機ホウ素化合物は,現代精密有機合成化学を支える最重要炭素求核種の一つである.化学選択的変換を可能とする穏やかな反応性,高い官能基許容性,水・酸素への安定性,bench-stableな性質など,他の有機金属化合物にはない特徴を兼ね備えているためである.有機ホウ素化合物を触媒的に合成するための鍵活性種として,われわれはジボロンと銅触媒のシグマ結合メタセシスで発生できるボリル銅に注目している.ソフトな特性を活かした炭素-炭素結合種との反応やホウ素求核剤としての特性を活かした反応など多彩な反応系デザインが可能であるためである.特に,ジボロンの一方のホウ素のルイス酸性を抑制できる置換様式を付した非対称ジボロンを用いる反応開発に注力した.ホウ素のルイス酸性にコントラストを持たせることで,シグマ結合メタセシスの化学選択性を完全に制御でき,ルイス酸性抑制型ボリル銅のみを発生できる独自の成果に基づいている.これにより従来ほぼ未開拓であったルイス酸性抑制型ホウ素化合物の直截合成に道を拓く狙いである.今年度は,一方のホウ素をアントラニルアミド置換にすることでルイス酸性を抑制した新奇非対称ジボロンを合成することに成功した.このジボロンを銅触媒存在下,末端アルキンとアルコールと作用させることでアントラニルアミド置換ホウ素のみをアルキンに導入できる三成分連結型ヒドロホウ素下を達成した.ルイス酸性抑制によりホウ素を完全な内部選択性で導入できる点が特長である.さらに,パラジウム触媒とのシグマ結合メタセシスの化学選択性も銅と同様完全に制御でき,ハロゲン化アリールとの反応でアントラニルアミド置換アリールボランを合成できることも見つけた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ルイス酸性抑制型新奇ジボロンの合成,それを鍵反応剤とする様々な触媒的ホウ素化反応の開発は極めて順調に成果を挙げている.これに加えて,多くの研究グループが利用しているジアミノナフタレン置換非対称ジボロンの実用的合成法の確立やスズのルイス酸性の差異を利用した新しい触媒的スタニル化反応など当初の計画以上の拡がりで進展しているため.
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今後の研究の推進方策 |
アントラニルアミド置換の非対称ジボロンを用いた触媒的ホウ素化反応を一層発展させるとともに,得られるアントラニルアミド置換有機ホウ素化合物群を利用した炭素-炭素結合形成反応の開発に取り組む.さらに,今年度端緒を得たスズのルイス酸性を利用した新しい触媒的スタニル化反応についても研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初の使用予定どおり使ったが,少額だけ残額が生じた.翌年度請求の助成金とあわせて,研究推進に資するよう効率的な使用を心がける.
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