研究課題/領域番号 |
17K05865
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
畠中 康夫 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80344117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒的不斉oxo-Diels-Alder 反応 / 非活性ジエン / アルデヒド / 光学活性オキサシクロヘキセン |
研究実績の概要 |
キラル3,6-ジヒドロピランおよびこれを還元して得られるキラルテトラヒドロピランは、生理活性物質や天然物の基本骨格として、また合成中間体としてその合成法は重要である。効率的なジヒドロピランの合成法として、非活性ジエンと芳香族アルデヒド、アルケニルアルデヒド、および脂肪族アルデヒドとの、触媒的不斉oxo-Diels-Alder 反応の開発に成功した。電子供与性置換基を持たない非活性ジエンの不斉oxo-Diels-Alder 反応はこれまで困難とさており報告例がなかった。一方、Danishefskyジエンなど強力な電子供与性基をもつジエンとアルデヒドとの触媒的不斉oxo-Diels-Alder 反応は数多く報告されているがこの反応からは、生成物としてジヒドロピランは得られない。
今回、新規なキラルなリン酸アミド触媒を用いて2,3-ジメチルブタジエンやイソプレンなどの非活性ジエンとアルデヒドを反応させたところ、高収率、高エナンチオ選択的に光学活性ジヒドロピラン類を合成することに成功した。生成物の鏡像体過剰率は、溶媒、触媒構造、アルデヒドの置換基に大きく影響される。すなわち、溶媒としてアニソール、触媒のBINOL 3,3’位に2,4,6-(トリイソプロピル)フェニル基 かつ6,6'位にトリフルオロメチル基を導入すると、飛躍的に生成物の鏡像体過剰率が向上することが分かった(収率85-98%、85-96% ee)。当該反応は、電子吸引性基を有する芳香族アルデヒドを基質とする場合、もっとも円滑に進行する。一方、脂肪族アルデヒドやアルケニルアルデヒドを基質として用いた場合、収率および鏡像体過剰率の低下がみられた。この結果は基質カルボニル基の低電子密度が反応を促進することを示唆している。以上、これまで不可能とされた非活性ジエンとアルデヒドのoxo-Diels-Alder 反応が、キラルリン酸アミド触媒により、高い鏡像体過剰率で光学活性ジヒドロピランを与えることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不活性ジエンと芳香族アルデヒドの、触媒的不斉oxo-Diels-Alder 反応を検討した。新規触媒である6,6'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3'-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ビナフチルトリフルイミドを新たに開発し、反応を行ったところ飛躍的に反応成績が向上することを見出した。2.5mol %の低触媒量、かつ常温で反応が進行する点、工業的にも価値が大きい成果であると考えている。現在、以上の結果をまとめ論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
新規触媒である6,6'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3'-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ビナフチルトリフルイミドを用いても、器質として、脂肪族アルデヒドを用いたところ、エナンチオ選択性は、中程度(45-62% ee)であり、触媒構造の改良が必要であった。そこで、触媒のBINOL6,6'位にさらに強力な電子吸引基、例えば、トリフルオロメチルスルホニル基などを導入し、この問題を解決する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規触媒である、新規触媒である6,6'-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)-3,3'-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ビナフチルトリフルイミドの開発に用いる。
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