研究実績の概要 |
炭素-水素結合による炭素-炭素多重結合への付加は、原子効率の高い環境調和型炭素‐炭素結合形成である。配向基を手がかりにしたヒドロアリール化反応は活発に研究されているが、ヒドロアルキル化反応、特に配向基を用いない分子間反応の開発は遅れている。本研究では、カチオン性イリジウム触媒を用いた活性メチレン化合物による脂肪族単純末端アルケンへの分子間ヒドロアルキル化反応を開発することを目的とした。1,3-ジケトンの脂肪族末端アルケンへのヒドロアルキル化が進行することを見出している。本反応がグラムスケールでの実施が可能であることを示した。得られた生成物をヒドロキシルアミンやヒドラジンと反応させ、高収率で芳香族複素環化合物を得た。汎用化学原料である脂肪族単純アルケンから複雑な炭素骨格構築ができることを示した。β-ケトエステルと脂肪族末端アルケンの反応では、Markovnikov型生成物がジアステレオマー混合物として得られることを見出した。エピ化が進行するため、反応条件や基質の構造を検討してもジアステレオ比を改善できなかった。ヒドロアルキル化生成物をKrapco脱エステル化することにより、ケトンを単一の生成物として高収率で得ることができた。本連続反応は、メチルケトンの脂肪族単純アルケンへの間接的ヒドロアルキル化とみることができる。β-ケトエステルと脂肪族末端アルケンのone-potヒドロアルキル化/Krapco脱エステル化連続反応を行い、基質適用範囲及び官能基許容性を調べた。エステル基、イミド基、アミノ基、ハロゲンは反応に共存することができ、本反応が高い官能基許容性を有することを示した。α-置換-β-ケトエステルについても反応を行った。1,3-ジケトン、β-ケトエステル以外の活性メチレン化合物を用いて脂肪族単純末端アルケンへのヒドロアルキル化を行い、効率的に反応が進行する基質を見出した。
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