研究課題/領域番号 |
17K05872
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 雅紀 旭川工業高等専門学校, 一般理数科, 准教授 (30322829)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 不斉合成 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
医薬品開発において不斉四級炭素構築法の開発が求められている。特に環境負荷および生産コストが低い反応であること、高収率かつ高立体選択的に目的物が得られることが実用化の観点から重要である。本研究では、単純なアミノ酸を触媒として用いたα位分岐型カルボニル化合物の不斉α-アルキル化反応の開発により、実用性に優れた不斉四級炭素構築法の確立を目的としている。具体的には、入手および取り扱いが容易な光学活性化合物である第一級α-アミノ酸を触媒として用い、α位分岐型カルボニル化合物との反応により生じたエナミンをハロゲン化アルキルに対して求核剤として反応させることで、Storkエナミン-不斉アルキル化反応を高収率かつ高エナンチオ選択的に達成する。筆者らの研究により、光学活性な第一級アミノ酸およびその塩はα位分岐型アルデヒドとのイミン-エナミンを形成しやすく、発生したエナミンによる求核付加反応がエナンチオ選択的に進行することがわかっている。 当初の計画では、H29年度中にハロゲン化アリルを用いたα位分岐型アルデヒドの不斉α-アリル化反応を検討し終える予定であったが、目的生成物の収率およびエナンチオ選択性において満足な結果が得られなかったため、平成30年度も引き続き、同反応の条件検討を進めた。アルデヒドを用いたイミン-エナミン型反応についてこれまでに得られている知見を活かすため、特に、2-フェニルプロピオンアルデヒドを基質としたアリル化反応について重点的に検討を行った。反応温度や濃度、触媒、溶媒などの基本的な条件検討のほか、アリル化合物の脱離基の変更やガスクロマトグラフィーを用いた反応基質および試薬消費量の調査により本反応についての理解が進み、収率およびエナンチオ選択性の向上に結び付いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H30年度も引き続き、基質として2-フェニルプロピオンアルデヒドを用い、ハロゲン化アリルなど脱離基を有するアリル化合物への求核置換反応によるアリル化反応の収率とエナンチオ選択性の改善を試みた。反応条件の詳細な検討やガスクロマトグラフィーを用いた実験による反応解析を進めた結果、触媒としては側鎖が嵩高くなっている第一級α-アミノ酸が有効であることや、用いる塩基の種類により収率およびエナンチオ選択性が大きく変化することなどを見出した。H30年度のはじめには、目的とするアリル化生成物は収率27%、エナンチオ選択性34% eeで得られるのみであったが、本年度の研究成果により、78%、93% eeにまで向上させることに成功している。当初の研究計画ではH30年度中にα位分岐型アルデヒドに対して様々なアルキル化剤を反応させ、不斉α-アルキル化反応を達成する予定となっていたが、前述のように、現在はアリル化反応で良好な収率とエナンチオ選択性がようやく得られるようになった段階であるため、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。研究計画の当初から目標としていた収率90%、95%ee以上を達成するため、引き続き条件検討を慎重に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究を続けてきたところ、計画段階では想定していなかった反応条件でα位分岐型アルデヒドのα-アリル化反応における目的生成物の収率やエナンチオ選択性に改善が見られたことから、想定以上に条件検討に時間を要している。また、今年度の研究により、反応が進行するにつれて反応速度が低下していくことが明らかとなった。現在は様々な実験結果から反応機構を考察し、収率とエナンチオ選択性をさらに改善するべく注意深く条件検討を進めているところである。全体的な研究の進行状況は当初の計画よりも遅れているものの、目的とする反応を高いレベルの収率とエナンチオ過剰率で進行させることに成功していることから、もう少し時間をかけて反応条件をブラッシュアップし、研究計画で目標としていた90%、95% eeを達成したい。今後はα位分岐型アルデヒドに対して様々なハロゲン化アルキルを用いたα-アルキル化反応へと研究を進め、さらに、平成31年度の研究期間終了までにα位分岐型ケトンを用いたアルキル化反応へと展開していく。計画よりも進捗状況が遅れていることから、反応に用いる基質の種類を絞りこむ必要があるが、可能な限り当初の研究計画を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたよりもガラス器具の破損や試薬など消耗品の消費量が少なく済み、物品費の使用額が少なかったため次年度使用額が生じた。大きな額ではないため、H31年度に物品費として使用する予定である。
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