本申請では、適切に分子設計を施したアミノ酸由来のイソシアニドモノマーの重合系で発現する高度な不斉増幅現象を活用した革新的キラルマテリアルの創製を目指し、以下に示す成果を得た。 1.連鎖重合と超分子重合が極めて高い不斉増幅を伴って連続して進行するメチルイソシアニド誘導体のtransit-type merry-go-round重合の開発に成功した。 2.エステル基を有するキラル/アキラルイソシアニドのtransit-type merry-go-round共重合により得られた一方向巻き超分子らせんポリマーを、キラル固定相に応用したところ、軸不斉化合物に対して良好な不斉識別能を示すことが明らかとなった。本結果は、効率的な不斉増幅現象を利用することで、極僅かな不斉源から機能性キラルマテリアルを開発できることを示している。 3.昨年度までに、蛍光発光性ユニットを側鎖に導入した一方向巻き超分子らせんポリマーが薄膜状態で優れた円偏光発光(CPL)特性を示すことを見出している。今年度は、偏光顕微鏡観察、X線回折測定及びAFM観察結果に基づき、サブマイクロメートルオーダーの長さをもつ一方向巻き超分子らせんポリマーがさらにらせん状に規則的に集積することが、CPL能の発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 4.「3の一方向巻き超分子らせんポリマー」と「固体状態において蛍光発光特性を示す種々のアキラル色素分子」のブレンドフィルムを作製し、CPL能の評価を行ったところ、添加した色素はいずれもアキラル化合物であるにもかかわらず、各色素の蛍光発光領域に明確なCPLシグナルが観測され、それらの非対称性因子はいずれも10-2オーダーであることを確認した。ブレンドフィルム中、ポリマー鎖間に形成される不斉空間内に、アキラル色素分子がなんらかの不斉な様式で配列することで誘起CPLが発現したものと考えられる。
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