研究課題/領域番号 |
17K05876
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松見 紀佳 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40323745)
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研究分担者 |
VEDARAJAN R 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40638756) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アニオンレセプター / フッ化物イオン / 無機高分子 / 有機ケイ素高分子 / 有機ホウ素高分子 |
研究実績の概要 |
ポリボロシロキサンのアニオントラップ能力を活かした新機能の創出として、ポリボロシロキサンを支持高分子材料とした高分子イオンゲル電解質の作製とそれらの特性の検討を行った。 従来我々が開発した手法によりポリボロシロキサンを合成した後、1-アリルイミダゾリウム TFSIと各種リチウム塩を添加し、高分子イオンゲル電解質を作製した。それらのイオン伝導度の温度依存性に関して交流インピーダンス法により検討した。得られた高分子イオンゲル電解質は概ね10-4 Scm-1以上の高いイオン伝導度を示し、とりわけリチウム塩としてLiFSIを加えた系において最大で1.8x10-3 Scm-1の最大のイオン伝導度を示すに至った。また、イオン伝導メカニズムに関しても知見を得るため、Vogel-Fulcher-Tammannプロットを行い、系内のキャリアーイオン濃度、イオン輸送の活性化エネルギーに関しても算出した。全般に、LiFSI添加系においてはキャリアーイオン濃度が向上し、かつイオン輸送の活性化エネルギーが低下することが明らかとなった。電解質の電気化学的安定性に関して、Li/電解質/Pt型セルを用いた直線走査ボルタンメトリーにより評価し、約4V近く(Li/Li+)の電気化学的安定性を有していることが明らかとなった。その後、Vincent-Evans-Bruce法により系内のリチウムイオン輸率を交流インピーダンス法と直流分極法の併用により算出したところ、常温において0.40のリチウムイオン輸率を観測した。 総合的にイオン輸送特性と電気化学的安定性に優れた電解質であることが見出され、様々なエネルギーデバイスへの活用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に見出したポリボロシロキサンの自己修復能や金属腐食の防止機能に加えて、新たに高分子イオンゲル電解質用の支持高分子材料として優れたイオン輸送特性の発現をもたらすことが見出された。本研究が意図しているケイ素をホウ素の両元素を主鎖に有するシナジー効果により、1.有機ケイ素系高分子材料としての安定性、2.有機ホウ素系高分子材料としての塩解離の促進効果・アニオントラップ効果が発現しており、材料機能の新たな知見の獲得に結び付いており、今後の応用につながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ケイ素、ホウ素の両元素のシナジーによる機能高分子材料創成をさらに一段と推進する目的で、両元素を同時に主鎖に有する各種共役系高分子材料を合成、評価する。ホウ素系共役系材料は優れた発光特性やTADFの発現、高い電子輸送能などの機能が知られているが、ケイ素と組み合わせることでさらに材料の安定性を向上させつつ目的に応じたバンドギャップ等の電子状態の制御も可能になると考えられ、材料設計の幅が広がることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度においても消耗品の購入の必要があることは当初計画通りであり、高分子合成のために要する試薬や有機溶媒、不活性ガス、ガラス器具等の消耗品代が必要となる。
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