研究課題/領域番号 |
17K05877
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小幡 誠 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70343267)
|
研究分担者 |
廣原 志保 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70413804)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 精密重合 / 高分子ミセル / カルボラン / ホウ素中性子捕捉療法 |
研究実績の概要 |
近年、ホウ素薬剤と中性子を用いるガン治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)への期待が高まっている。しかし、現在利用可能なホウ素薬剤はボロカプテイトとボロノフェニルアラニンの2種類しか見出されていない。本研究では『活性エステルモノマーの制御ラジカル重合によるブロックコポリマーの合成と重合後修飾』という合成戦略により、ホウ素クラスターを高度に集積した高分子ミセルを創製する。ブロックコポリマーの組成やミセル粒径、リガンド量などの高分子特性をパラメーターとして培養細胞を用いたホウ素の細胞内取り込み量と細胞毒性に基づくDDS機能との関係を明らかにし、最適化されたBNCT用ホウ素DDSキャリアを創製する。 本年度は重合後修飾に用いるm-カルボランの合成、活性エステルを有する両親媒性ブロックコポリマーの合成および重合後修飾条件の検討を行った。重合後修飾のためのアミノ基を導入したm-カルボランはアジドの還元により合成するが、通常用いられるPd/C触媒では一部、脱ホウ素化が進行してしまうことが分かった。一方、アダムス触媒を用いた場合は脱ホウ素化は起きないが、触媒の除去がかなり困難であった。最終的にアダムス触媒による還元後、金属スカベンジャーを利用することにより問題を解決した。 すでに確立している方法で活性エステルを有するブロックコポリマーを合成し、重合後修飾条件を検討した。最終的に活性エステルが残存しない重合後修飾条件を見出し、m-カルボランを疎水性セグメントの側鎖に有する両親媒性ブロックコポリマーを得た。得られたポリマーのミセル化はピレン蛍光プローブ法で明確な臨界ミセル濃度が検出されることにより確認した。 また、研究分担者は非細胞系におけるICP-AESによるホウ素の定量法を確立した。今後は細胞系における実験法を確立する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階のm-カルボラン修飾両親媒性ブロックコポリマーの合成と高分子ミセル化に成功した。研究計画ではm-カルボランの脱ホウ素化によりイオン性のnido体へ変換し疎水性が失われる可能性を心配していたが、特にそのようなことは見られなかった。 より詳細な高分子ミセルの物性評価や細胞内取り込み評価には課題が残っているが、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は組成や重合度の異なるm-カルボラン修飾両親媒性ブロックコポリマーを合成し、高分子ミセルの物理化学的特性を調べる。また細胞実験系におけるポリマーの構造と細胞内取り込み量との関係を検討する。また停止末端へのリガンドの導入法およびICP-AESによるホウ素の定量法を確立して、高分子ミセルの特性と細胞内取り込みとの関係を精査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の所属機関(宇部工業高等専門学校)において、当初の購入予定額よりも安価に購入できた物品があったため、残額調整の結果、繰越金が発生した。繰越金は平成30年度に研究分担者が担当する細胞実験の物品費として使用する。
|