研究実績の概要 |
ラクチドの硫黄類縁体であるチオラクチド(ラセミ体)の開環重合において、弱い塩基であるピリジンが触媒として有効に働くことを見出した。この反応は室温において平衡重合性を示し、バルク条件下でモノマーの転化率は50%程度であったが、チオール開始剤無しでは、重合が進行しなかった。昨年まで触媒に使ってきたDBUや求核性のないiPr2EtNでも開始剤なしで重合が起こることから、ピリジン触媒が分子量制御に有効であることが分かった。得られたポリチオラクチドのアルカリ加水分解性と紫外光分解性をポリラクチドと比較したところ、予想通りポリチオラクチドの方が易分解性を示した。 開始剤としてn-Bu3P を用いて、メタクリル酸チオエステルの重合制御を試みた。各種溶媒を持用い、その融点以上の-78℃~-20℃で重合を検討したが、良い結果は得られなかった。Bu4PPh4Bなどのホスホニウム塩を加えて末端アニオンに安定化を試みたが効果がなかった。しかし、(Ph2PC5H4)2FeなどのジホスフィンをDMF中で開始剤に用いたところ、分子量の増大と分子量分布の減少が見られ、重合制御の可能性が示された。 水溶性の(メタ)アクリル酸チオエステルポリマーを合成するため、2つの水酸基をアセタール保護した形式のS-(2,2-dimethyl-1,3-dioxolane-4-ylmethyl) thio(meth)acrylate(1)と双性イオンの官能基をもった[2-((meth)acryloysulfany)ethyl](3-sulfopropyl)dimethylammonium(2)を新たに合成した。モノマー1については、ジメチルクリルアミドとラジカル共重合させた後、脱保護した。一方、モノマー2は、水中単独でラジカル重合させた。これらの、水溶性ポリマーに対して、片末端をシステインエステルで修飾したポリエチレングリコールをpH8で作用させたところ側鎖チオエステルの交換アミド化反応が起こり、グラフト共重合体を得ることができた。
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