高分子に導入したキラル有機分子触媒に対応した不斉反応を行い、高分子固定化型キラル有機分子触媒の触媒性能の評価を行った。バッチ式反応において、直鎖状高分子触媒では高転化率、高収率、ゲル状高分子触媒では高立体選択性、高分子微粒子触媒では高い回収性・再使用性を示すことが明らかとなった。特に、コアーコロナ型高分子微粒子の場合、反応性は低下するものの、高エナンチオ選択性および高い回収・再使用性を示した。 次に、キラル有機分子触媒をゲル状高分子または高分子微粒子に固定化した、高分子固定化型キラル有機分子触媒の合成に成功し、酸および塩基触媒を同一系で使用したワンポット合成反応を試みた。酸触媒にフェニルスルホン酸、塩基触媒にジフェニルプロリノールメチルエーテルを用いた場合、高分子微粒子同士の組み合わせでワンポット反応は円滑に進行し、目的の光学活性化合物が高エナンチオ選択的に得られることを新たに見いだした。 本研究により、高分子微粒子、架橋型高分子や直鎖状高分子の化学構造に加え、親水性-疎水性バランスや架橋度、触媒含有量を調整した多彩な高分子触媒を合成することができた。精密に設計した担体高分子の高分子網目が不斉反応に適した反応場を提供し、低分子触媒系ではお互いに反応しうる性質の触媒を用いた実用的なワンポット合成プロセスの開発に成功し、グリーンケミストリーによるトータル効率に優れた有用物質の合成方法が提供できるようになった。
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