研究実績の概要 |
エナンチオマーを用いた医薬品の需要は日々高まっており、ラセミ体の光学分離は重要な工程である。多糖カルバメート誘導体は、キラル分離の担体として圧倒的に高いシェアを維持しているが、その分子形態とキラル分離能の相関はほとんど調べられておらず、個々の試薬ごとに分離条件の探索が必要となる。本計画では、申請者らが詳細に調査した、線状鎖及び環状アミロース誘導体について得た、分子形態(らせん構造・剛直性)が置換基と溶剤に顕著に影響されること、線状鎖と環状鎖で異なる局所形態をとることをヒントに、それらの誘導体のキラル分離能の相関を明らかにすることを目的として研究を行った。 これまでの研究で、いくつかの誘導体について環状鎖と線状鎖の局所分子形態の違いを定量的に調べるとともに、キラルカラムとして上市されている3,5-ジメチルフェニルカルバメート、ブチルカルバメート誘導体、そしてオクタデシルカルバメート誘導体で、キラル分離挙動が線状鎖と大きく異なることを明らかにし、学会発表を行った。現在後2者のアルキルカルバメート誘導体についての論文発表の準備中である。これらの他、本年度は、多分岐構造を持つアミロースを原料とした誘導体を調製し、それらの溶液中における分子形態を調べるとともに、キラル分離挙動を調べ、線状鎖・環状鎖とも異なる分離特性を持つことを明らかにした。これについても現在論文発表を準備中である。これらの他、溶液中において低分子との相互作用の違いが明らかであるフェニルカルバメート誘導体の分離挙動について予備的な知見を得た。
|