研究実績の概要 |
モノマーを鋳型材料によって集積させて重合させる鋳型重合は立体規則性の制御が可能であるが、従来の鋳型重合では分子量の制御された鋳型材料の合成が容易ではない。申請者はこれまで、人工DNA を鋳型材料にしてDNA塩基受容体(レセプター)を修飾した分子を自己組織化により集積させて、ナノサイズの分子集積体の構築に成功した。本研究ではこの手法により重合性モノマーの集積体を構築して、光鋳型重合を達成し、生成物の分子量と立体規則性の制御を目指す。光エネルギーを利用すれば低温で重合できるため、集積体構造が攪乱されることなく立体規則性を保持した生成物が期待できる。 平成30年度は核酸塩基受容体である環状ポリアミン亜鉛錯体を光重合性の1,3-ジフェニルブタジインに化学修飾した誘導体を再合成し、鋳型材料であるチミジンのみから形成されるオリゴDNAとの自己組織化により複数の1,3-ジフェニルブタジイン誘導体が2本のDNA鎖に挟まれたサンドイッチ型の集積体を形成することを明らかにした。さらにチミン塩基とブタジイン誘導体の塩基受容体部とは化学量論的に結合していることがわかった。この集積体に光照射を行うと、光反応によるモノマーの吸収スペクトルの減衰と長波長側に新たな吸収スペクトルの増加が確認され、さらに液体クロマトグラフィーにおいて1,3-ジフェニルブタジイン誘導体の他に新たなピークが得られたことから、光重合が起こっていることが示唆された。現在、オリゴDNA鎖長の鎖長に異なるオリゴDNAを鋳型にして、同様の実験を行い、生成物の単離、同定を行っている。
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