研究実績の概要 |
合成高分子は一般に異なる分子量の分子の混合物であり、幅広い分子量分布を有する。しかしながら合成高分子の特定の物性や機能を調べたり使ったりしたい場合、単一の分子量であることが望まれる。モノマーを鋳型材料によって集積させて重合させる鋳型重合は立体規則性の制御が可能であるが、従来の鋳型重合では分子量の制御された鋳型材料の合成が容易ではない。申請者はこれまで、人工DNAを鋳型材料にしてDNA塩基受容体(レセプター)を修飾した分子を自己組織化により集積させて、ナノサイズの分子集積体の構築に成功した。本研究ではこの手法により重合性モノマーの集積体を構築して、光鋳型重合を達成し、生成物の分子量と立体規則性の制御を目指す。光エネルギーを利用すれば低温で重合できるため、集積体構造が攪乱されることなく立体規則性を保持した生成物が期待できる。 光重合性を有する1,3-ジフェニルブタジインにDNA塩基受容体である環状ポリアミン亜鉛錯体を化学修飾した受容体修飾モノマーを合成した。チミンのみからなるオリゴDNAとの会合を評価したところ、DNA塩基と受容体が1:1の化学量論で結合した均一なモノマー集積体が形成されることがゲルろ過クロマトグラフィー分析により示唆された。オリゴDNAとの自己組織化により複数の1,3-ジフェニルブタジイン誘導体が2本のDNA鎖に挟まれたサンドイッチ型の集積体を形成していると考えられる。この1,3-ジフェニルブタジイン集積体に光照射を行うと、光反応による1,3-ジフェニルブタジインの吸収スペクトルの減衰と長波長側に新たな吸収スペクトルの増加が確認され、さらに液体クロマトグラフィーにおいて1,3-ジフェニルブタジイン誘導体の他に新たな生成物のピークとレーザー脱離イオン化質量分析により生成物が重合体であると同定されたことから、鋳型光重合が起こっていることが明らかになった。
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