基板表面に固定化した開始剤を起点として表面開始重合を行うことで、多様なポリマーを表面にグラフトすることが可能である。しかし、ポリイソプレンのようなエラストマーをグラフトするには技術的に困難を伴う表面開始アニオン重合を必要とするため、これまでの先行研究は極わずかしか存在していない。昨年度までの研究においてヘキサメチルシロキサン(D3)の表面開始アニオン重合を行ったところ、求核性の高いアニオン開始剤を用 いても膜厚10 nm程度のポリマーブラシしか生成せず、開始剤の反応効率が低いことが明らかとなった。そこで求核性の低いアニオン開始剤でも重合するエチレンオキシド誘導体の開環アニオン重合を試みた。イソプロプロポキシナトリウムにイソブチルアルミニウムを添加してトルエン中、グリシジルメチルエーテルの重合を行うと、収率は50%程度ではあるが、数平均分子量10000以上のポリエーテルが得られることを確認した。しかし、表面にグラフトすることは困難で、さらなる反応条件の検討が必要である。 エラストマーと同様にガラス転移温度(Tg)の低い長鎖アルキルメタクリレートからなるポリマーブラシをシリコン基板上に合成し、少量のトルエンとともに貼り合わせたところ室温にて0.5 MPaの強度で接着することが明らかとなった。また、ポリマーブラシのグラフト密度、分子量、分子量分布が接着に与える影響を検討するため、種々の一次構造を有するPMMAブラシを調製した。PMMAブラシを対向するように重ね合わせて貼り合わせ、熱接着させると接着強度は特定の分子量分布、グラフト密度、分子量の時に最大となることが明らかになった。接着界面における分子鎖の構造が大きな影響を与えていると考えられる
|