昨年度に引き続き、アレン骨格を有する交差共役系高分子の合成について検討を行った。モデル反応では、プロパルギル位に置換基をもたないプロパルギルカーボナーを用いると、目的物のアレン体以外に異性体であるプロパルギル体が20%程度副生した。この結果をもとに二官能性のビス(プロパルギルカーボナート)誘導体とジボロン酸との重合を行ったところ、アレン骨格とプロパルギル骨格の比が概ね7:3であるポリマーが生成した。アレン骨格自体はパラジウム触媒に対して活性であるが、アレン骨格を多数含むポリマーを初めて単離することに成功した。プロパルギル位にメチル基を導入したプロパルギルカーボナートを用いるとアレン骨格のみのポリマーが生成するが、単離には成功していなかった。そこで、昨年度に引き続き単離を試みたが、成功に至らなかった。アレン骨格が密集することによる自己反応が原因の1つと思われる。単離せずに高分子反応によってアレン骨格をジエン骨格への変換を行うと、変換率は30%程度であり、70%程度のアレン骨格を含む単離可能なポリマーが生成した。上述したプロパルギル骨格を30%程度含むポリマーも単離できたことから、ポリマー中のアレン骨格の密度はある程度下げる必要があると思われる。 上述したように、プロパルギル位に置換基をもたないプロパルギル炭酸エステルを用いるとプロパルギル体が副生することから、プロパルギル体の選択的合成に挑戦した。その結果、触媒にPd(PPh3)4を20 mol%用い、ボロン酸とプロパルギル炭酸エステルの仕込み比を2:1とし、無水硫酸マグネシウムを加え、ジオキサン中で反応を行うと、ほぼ100%の収率でプロパルギル体のみを得ることができた。反応条件を変えるだけでアレン体ではなく、プロパルギル体を選択的に高収率で合成することに成功した。
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