研究実績の概要 |
日本は世界有数の非鉄金属消費国であり、金属は日常生活や産業活動に必要不可欠な鉱物資源である。一方で国内の鉱山が次々と閉山する中、金属供給を海外に依存する状況になっている。そこで,現存する資源の有効活用を目指す中で、都市鉱山と呼ばれる廃棄物中に含まれる金属が注目されている。これを分離回収する技術の構築が求められており、その中の溶媒抽出法に用いる新規抽出剤に関する研究を行った。溶媒抽出法は金属イオンの分離能が高く、分離操作時間が短く、高濃度金属溶液から分離回収できるという利点がある。 研究代表者らは、新規抽出試薬としてビスβ-ケトエステル型配位子であるHexane-1,6-diylbis (4,4,4-trifluoro-3-oxobutanoate):H2hdfob4)の抽出能や分離能の検討を行ってきた。この配位子は、対称性が高くフレキシブルな構造であるため、アルキル鎖長の制御によって単核錯体から2核及び鎖状の多核錯体までの生成が可能であった。しかしながら,H2hdfobにはエステル結合があり,酸や塩基によって加水分解される可能性がある. そこで本年度は、エステル結合がない配位子としてビスβ-ジケトン型配位子である1,14-diphenyltetradecane-1,3,12,14-tetraone:H2DTTを合成し、その抽出能や選択性の検討を行った。 さらに、H2DTTのフェニル基のパラ位に電子吸引基であるフルオロ基を導入した1,14-di-p-fluorophenyl-tetradecane-1,3,12,14- tetraone:F2PTTと、電子供与基であるメトキシ基を導入した1,14-bis(p-methoxyphenyl)tetradecane-1,3,12,14-tetraone:PMTTを合成し、希土類金属イオンの抽出能、分離能および抽出平衡の解析を行った。
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