研究実績の概要 |
日本は世界有数の非鉄金属消費国であり、金属は日常生活や産業活動に必要不可欠な鉱物資源である。そこで、現存する資源の有効活用を目指す中で、都市鉱山と呼ばれる廃棄物中に含まれる金属が注目されている。これを分離回収する技術の構築が求められており、その中の溶媒抽出法に用いる新規抽出剤に関する研究を行った。 本研究は、エステル化反応と還元反応で合成される配位子を用いた錯生成反応を溶媒抽出法によって解析し、金属の分離材として適用するための検討を行うことを目的とした。 研究当初から、末端にフェニル基を導入した配位子の合成を行っており、本年度は2017年度に合成した新規抽出剤のβ-ジケトン型配位子である1,14-diphenyltetradecane-1,3,12,14-tetraone:H2DTTのアルキル鎖の炭素数を変化させた3種類の抽出剤を合成して、その希土類金属イオンの抽出能、選択性および抽出機構を明らかにした。新規に合成したベータジケトンを結合した炭素数が6、4および2の抽出剤は、それぞれ1,14-diphenyltetradecane-1,3,12,14-tetraone (H2DTeT),1,12-diphenyldodecane-1,3,10,12-tetraone (H2DDoT)および1,10-diphenyl-decane-1,3,8,10-tetraone(H2DDeT)である。特に、ベータジケトンを繋いでいる炭素数が8であるH2DTTとH2DTeTを比較した。H2DTeTは溶解度が低く、その濃度を考慮するとH2DTTと同程度の抽出能を示した。また、炭素鎖長が短く、立体的に配位が困難と考えられたが、希土類金属イオンの選択性の指標である半抽出pHの差はH2DTT同程度で有った。これは炭素鎖がフレキシブルであることに起因すると考えた。
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