研究課題/領域番号 |
17K05902
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大堺 利行 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183023)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 油水界面 / 吸着 / 非ボルン型溶媒和モデル / 理論計算 |
研究実績の概要 |
油水界面でのイオンや分子の吸着反応は、溶媒抽出、液膜、コロイド、イオン電極、イオン移動ボルタンメトリーなどの分離・検出系のメカニズムの理解において極めて重要な反応である。しかし、吸着反応の研究は必ずしも容易ではなく、十分な解明はなされていない。 本研究計画の初年度(平成29年度)においては、まず、研究代表者らが先に提案したイオンの溶媒和エネルギーの理論モデル(非ボルン型理論)を、イオン吸着の研究に良く用いられる1,2-ジクロロエタン/水(DCE/W)系に適用し、イオンの溶媒間移行エネルギー(ΔGtr)を正確に予測できる半経験式を得ることに成功した。また、非ボルン型理論に基づいてイオンと溶媒との各種相互作用(空孔形成、クーロン、分極、電荷移動など)のエネルギーを分割して議論することが可能であることを明らかにした。そして、これらの成果を学術誌(Analytical Sciences, in press)に発表した。 上記の非ボルン型理論に基づいて、油水界面でのイオン/分子の吸着エネルギー(ΔGad)や配向状態(配向角、回転角、侵入深さ)を予測する計算プログラムを開発した。そして、このプログラムを用いて、DCE/W界面での界面活性アニオン(ドデシル硫酸イオンなど)および中性分子(ドデシルアルコールなど)の吸着反応の理論的予測を行ったが、イオンや分子の疎水性表面が油相へ貫入し、解離基や水酸基のような親水性表面が水相側へ残る形で吸着するという予想通りの結果が得られた。この理論的に予想された結果を裏付けるため、現在、滴重法による界面張力測定により、ドデシルアルコールなどのΔGadの実験値を求め、理論値との比較検証を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で詳しく述べたように、当初の研究計画に準じて、概ね順調に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究を遂行する過程で、イオン性の吸着種を解析する場合、油水界面での電気二重層内の電位分布の影響が重要であることが示唆された。このため、今後の研究を強く推進するために、電気二重層の影響を考慮した新しいプログラムを構築する必要があると思われる。次年度には、これに着手して新規プログラムを開発するとともに、実験面においてもイオン性の吸着種の測定、特に電位変調蛍光(PMF)分光法による測定を重点的に行い、開発したプログラムの有用性を明らかにしたい。
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備考 |
研究室のホームページに、本研究に関連する論文や学会発表などについて掲載している。
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