研究課題/領域番号 |
17K05917
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平野 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70415735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気化学 / マイクロ・ナノ電極 / DNA / 細胞 |
研究実績の概要 |
細胞の代謝は、必要なエネルギーなどを生産するプロセスであり、代謝経路と呼ばれる複雑な化学反応により構成されている。細胞の代謝の評価は、疾病や分化の指標となることから、医薬品や再生医療などの研究開発において不可欠となっている。例えば、心筋細胞では常に多くのエネルギーを必要とすることから代謝の異常は重大な疾患に繋がる。しかしながら、従来の細胞の代謝活性測定では対象となる細胞群が均質でない場合が多く、定量性が課題となることがあった。そこで、本研究では、マイクロ電極に複数種の酵素を固定化し、細胞近傍などの局所の代謝物濃度をリアルタイムで観察する技術を開発し、細胞にダメージを与えることなくその動態を観察できる走査型電気化学顕微鏡(SECM)と組み合わせて、標的となる細胞を選択して一細胞レベルでエネルギー代謝を評価することを目指している。 今年度は、細胞の代謝物を評価するために、マイクロ電極表面にDNAを足場として複数種類の酵素を固定化することで、局所の代謝物などを評価可能なセンサプローブの開発を進めた。また、心筋細胞などのエネルギー代謝は温度やpHなどの培養環境の変化に影響を受けることから、SECMを利用してこれらの細胞を正確に評価するために、培養環境下で長時間、安定して測定するための技術開発を進めた。ここでは、足場としてDNA二本鎖間を非可逆的にクロスリンクした、クロスリンク型DNAを含む様々なDNAを利用し、酵素間や電極間との配置、各固定化酵素の数の比、測定条件をmmサイズの金電極により検討した。また、電極表面の立体構造についても検討し、ナノメートルサイズの凹凸を形成することで酵素の固定化が効果的にとなる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、研究実施計画に基づいて細胞の代謝物を測定するためのマイクロ電極技術の検討を進め、高感度化に向けた知見を得ることができた。また、細胞を評価するためのSECMシステムの改良も進んでいる。そのため、今年度の本研究課題は概ね計画通りに進んでいると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は、DNAを足場としてマイクロ電極に酵素を固定化したプローブとSECMを利用して、細胞レベルでのエネルギー代謝を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた、初代培養細胞を利用した検討を次年度以降に進めることにしたため。
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