生命の維持には外部から取り入れた有機物などを利用して必要なエネルギーなどを生産する必要があり、この反応は代謝経路と呼ばれる複雑な化学反応により構成されている。細胞の代謝は細胞状態を評価する指標の一つであり、例えば、心筋細胞では常に大量のエネルギーを必要とすることから、代謝異常は重大な疾患に繋がる。そのため、薬剤開発では代謝活性への影響評価が不可欠となっているが、従来の細胞の代謝活性測定では対象となる細胞群が均質でない場合が多く、定量性が課題となることがあった。本研究では、細胞と同程度の大きさを有する針状マイクロ電極の表面に複数種類の酵素を固定化し、細胞近傍の代謝物濃度をリアルタイムで観察する技術を開発の開発を進めた。さらに、細胞にダメージを与えることなく、その状態を評価できる走査型電気化学顕微鏡(SECM)と組み合わせることで、標的となる細胞を選択してグルコース消費などを評価することが可能となった。特に、2020年度は培養環境下で長時間、安定して細胞を測定可能なSECMを利用して、薬剤添加時の細胞代謝を評価するための技術の評価を進めた。また、多くのエネルギーを必要とすることから代謝の異常は重大な疾患に繋がる心筋細胞などの細胞を標的として解析方法を開発した。加えて、細胞近傍の代謝物濃度を評価するためのセンサプローブの開発も進めた。マイクロ電極先端は極めて面性が小さく、固定化される酵素量が少なかったため、電極表面にナノメートルサイズの規則的な凹凸を形成する手法の開発を進め、効率的な酵素固定が可能となった。
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