研究実績の概要 |
マイクロアレイを基盤とした糖ペプチドーレクチン間の相互作用解析を実施した。糖ペプチドとしては糖鎖長(ペプチドー糖鎖間距離)が短いムチン型糖ペプチドと、O-Mannose型の2種について検討し、レクチンは植物レクチンとGalectinについて検討を行った。ムチン型糖ペプチドに関しては、NMRにおいてペプチド鎖と糖鎖間の水素結合および疎水性相互作用による互いの配座の拘束が存在することを既に報告している。実際に、糖鎖のペプチド結合位置に対応した相互作用の増減が顕著に観察されたが、糖鎖の結合位置のアミノ酸残基の影響が大きいことが示された。一方、O-mannose型糖ペプチドでは単糖(マンノース残基)が結合した糖ペプチドを用いた研究によりペプチド配座への影響は観察されないと結論付けられていた。そこで、合成CoreM1型2糖およびガラクトースおよびシアル酸を順次伸長した糖ペプチドライブラリを作成し、配座およびレクチンとの相互作用解析を実施した。その結果、O-mannose型糖鎖は糖鎖構造を厳密に認識するレクチンと糖鎖導入位置に大きく影響を受けるレクチン双方が存在すること。糖鎖構造を厳密に認識するレクチンにおいても既知の認識パターンとは異なる相互作用パターンを示すものが存在することが確認された。さらに、その配座解析の結果、糖鎖部分とペプチド間の明確な相互作用(水素結合および疎水相互作用)は観察されなかったが、CoreM1コア構造形成に伴いペプチドの配座がターン様構造で安定化されることが示された。これまで、ムチン型、O-フコース型、O-GlcNAc型等の糖ペプチドが距離制限のある明確な糖鎖―ペプチド間相互作用を示したことに対し、O-mannose型糖ペプチドの中でも1,2-cis型結合部位を有するCoreM1に関しては単純な立体反発によるペプチド配座制御機構が存在することが示された。
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