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2018 年度 実施状況報告書

タンパク質間相互作用を光制御する化学ツールの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K05921
研究機関東北大学

研究代表者

小和田 俊行  東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40584397)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード光操作 / タンパク質二量体化 / フォトクロミック化合物
研究実績の概要

本研究では、細胞内生体分子の機能を操作するための機能性小分子を開発することを目的としている。任意のタイミングで細胞内局所での分子機能操作を実現するために、時空間分解能の高い「光」を利用する。生体分子機能を任意のタイミングで可逆的に制御することができれば、様々な分子が相互作用し合う複雑な生命システムの理解につながると期待される。
光応答性タンパク質二量化剤の開発に取り組んだ。具体的には、FKBP12(F36V)リガンドとHaloTagリガンド間のリンカー長を変えた誘導体を作製し、それぞれの誘導体のFKBP12(F36V)に対する親和性の評価を蛍光偏光解消法により評価した。その結果、リンカー長が短い誘導体においてcis体とtrans体間での親和性の差が大きくなることが明らかとなった。
続いて、培養細胞を用いた実験へと移行するために、コンストラクトの作製を行った。哺乳動物用発現ベクターにFKBP12(F36V)と赤色蛍光タンパク質、およびHaloTagと緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した。さらに、細胞核や細胞膜内葉にタンパク質を局在化させるシグナルペプチド配列の遺伝子を導入したコンストラクトも作製した。
開発した光応答性二量化剤が生細胞内で機能するか、共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察を用いて評価した。ヒト胎児腎細胞(HEK293T)内の細胞質全体にFKBP12(F36V)を、核内にHaloTagを発現させた。共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察下で光応答性二量化剤を添加したところ、細胞全体に広がっていた赤色蛍光が核内へと移行する様子が観察された。さらに、移行初期の段階でUV光を照射したところ、移行が抑制されることがわかった。したがって、開発した光応答性二量化剤によるタンパク質二量体化の度合いを生細胞内でも光照射により制御可能であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

FKBP12(F36V)に対する光応答性リガンドの誘導体を合成し、試験管内での結合親和性評価の結果、昨年度開発したものより良いものが見出された。さらに培養細胞を用いた蛍光顕微鏡観察の実験へと移行しており、研究計画は概ね順調に実施されている。

今後の研究の推進方策

培養細胞内におけるタンパク質二量体化の光制御について、光照射条件(照射波長・照射時間・タイミングなど)を種々検討し、より効率の良い条件を探索する。また、二量体化の誘起と解除を光で可逆的に制御可能化について検証を行う。さらに、タンパク質の局在依存性を評価するために、核・ミトコンドリア・ERなど様々な細胞小器官に局在化させるためのコンストラクトを作製する。

次年度使用額が生じた理由

計画が順調に進んでいるため、比較的経費を抑えることができた。また、細胞実験は予備検討段階であり、細胞培養に関する消耗品費も予定より少なかったため次年度使用額が発生した。次年度は本格的に細胞培養ならびに蛍光イメージングを実施するため、そのための消耗品類(血清・観察用ディッシュなど)の購入を予定している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Light-wavelength-based Quantitative Control of Dihydrofolate Reductase Activity Using Photochromic Isostere of Inhibitor2019

    • 著者名/発表者名
      Takato Mashita, Toshiyuki Kowada, Hiroto Takahashi, Toshitaka Matsui, Shin Mizukami
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1002/cbic.201800816

    • 査読あり
  • [学会発表] Development of light-switchable protein-protein interaction system for protein degradation2019

    • 著者名/発表者名
      Toshiyuki Kowada, Toshitaka Matsui, Shin Mizukami
    • 学会等名
      The 1st International Symposium on Chemical Communication (ISCC2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 蛋白質ラベル化技術を利用した蛋白質二量体化の光制御2019

    • 著者名/発表者名
      小和田俊行, 荒井啓介, 吉村彰真, 松井敏高, 菊地和也, 水上 進
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] タンパク質への結合を可逆的に光制御可能なメトトレキセート誘導体の開発2019

    • 著者名/発表者名
      間下貴斗, 小和田俊行, 高橋泰人, 松井敏高, 水上 進
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] 生体機能解析に供する機能性小分子の開発と蛍光イメージング2018

    • 著者名/発表者名
      小和田俊行
    • 学会等名
      平成30年度東日本分析化学若手交流会
    • 招待講演
  • [学会発表] 可逆的光応答性薬剤の開発2018

    • 著者名/発表者名
      間下貴斗, 小和田俊行, 高橋泰人, 松井敏高, 水上 進
    • 学会等名
      第29回 万有仙台シンポジウム
  • [学会発表] Photo-switchable Dihydrofolate Reductase (DHFR) Inhibitor2018

    • 著者名/発表者名
      Takato Mashita, Toshiyuki Kowada, Hiroto Takahashi, Toshitaka Matsui, Shin Mizukami
    • 学会等名
      Tohoku University's Chemistry Summer School 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 光でタンパク質への結合を可逆的に制御可能なリガンドの開発2018

    • 著者名/発表者名
      間下貴斗, 小和田俊行, 高橋泰人, 松井敏高, 水上 進
    • 学会等名
      第12回バイオ関連化学シンポジウム
  • [図書] イメージングの選び方・使い方100+(原田慶恵、永井健治/編)2018

    • 著者名/発表者名
      小和田俊行、水上 進(分担:第9章)
    • 総ページ数
      236(担当147-149)
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0375-6
  • [備考] 水上研究室 | 東北大学多元物質科学研究所

    • URL

      http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/mizukami/

  • [産業財産権] 光応答性化合物2018

    • 発明者名
      水上 進、間下貴斗、小和田俊行、松井敏高
    • 権利者名
      東北大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-165991

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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