研究実績の概要 |
2019年度の始めに申請者が富山大学より姫路獨協大学へ異動したことを契機に、新しく「ジフルオロメチル含有オリゴマー」の分子設計を考え、研究を開始した。着目したのはジフルオロメチル基である。これはフッ素の高い電気陰性度により、水素結合を作ることが近年知られており、超分子構造の構築にも有用ではないかと期待された。ジフルオロメチルベンゼンがフェノールの等価体として働くことを狙い、オリゴマーの合成を目指した。まず 3,5-ジブロモトルエンを原料として、4位のホルミル化、引き続いて DAST で処理することで、今回ビルディングブロックとなる 1,3-ジブロモ-2-ジフルオロメチル-5-メチルベンゼン を得た。ここからブロモ基を反応点とする薗頭反応を行いながら、2-ジフルオロメチル-5-メチル-1,3-フェニレン基の単位構造(以下、DFMP 構造とする)をアセチレン結合で連結していくことを試みたが、ここの薗頭反応は残念ながら低収率にとどまった。これは、DFMP 構造のブロモ基が、隣接するジフルオロメチル基のために反応性が奪われたためと予想された。また、通常は Pd とともに正触媒として働く Cu が、この系では添加により反応を阻害するなど、ピリジン-フェノール系では見られなかった障害にぶつかった。そこで代替策として、本研究課題で利用してきて反応性が高いと見込まれた 2,6-ピリジレン環を活用し、交互型オリゴマーを目指すこととした。まず、DFMP の 1,3-ジエチニル体までは薗頭反応で合成できたため、ここに 2,6-ジブロモピリジンとの薗頭反応を試みたところ、一定の収率で3量体は得られるようになり、再現性も確保できた。副生物として微量ではあるが5量体も得られ、合成法の効率が高くなれば目的オリゴマーの安定性には問題がないことが分かった。
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