研究課題/領域番号 |
17K05929
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
岡 夏央 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50401229)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グアノシン一リン酸合成酵素 / リン酸化 / キサントシン一リン酸 / 酵素応答性分子 |
研究実績の概要 |
グアノシン一リン酸 (GMP) 合成酵素は、キサントシン一リン酸 (XMP) の2位カルボニル基をアデノシン一リン酸 (AMP) 化してAMP-XMPとし、GMPを生産するとされている。この酵素反応の鍵中間体であるAMP-XMPは、酵素活性部位で生成後直ちに次の反応に消費されるので、生体からの単離は困難である。また、AMP-XMPは安定性が低いカルボニル酸素原子上のリン酸基を持つために化学合成が難しい。これらの理由により、AMP-XMPに関する研究はほとんど行われていない。 本研究は、AMP-XMP中のキサントシンの2位カルボニル基上のリン酸部位に官能基を導入した分子を合成標的とした。この様な分子は、GMP合成酵素による脱リン酸化に応答し蛍光発光や抗がん活性を発現する機能性分子として働くことが期待される。この様なAMP-XMPアナログの合成には、これまで達成されていないキサントシンの2位カルボニル基のリン酸化反応が必要であるため、本年度はその開発を試みた。まず、水酸基と6位カルボニル基を適切に保護したグアノシン誘導体の2位アミノ基をジアゾ化―加水分解し、キサントシン誘導体へと誘導した。次に、これを基質として、2位カルボニル基のリン酸ジエステル化反応の検討を行った。核酸塩基のカルボニル基に対するリン酸化反応は、研究代表者らが近年開発したCMMTを活性化剤としてホスホロアミダイトを反応させ、CSOで酸化後脱保護する方法(Chem. Commun. 2013, 49, 11503)の一例しか報告されていない。そこでこれを適用し、反応条件を種々検討したところ、目的とする2位カルボニル基がリン酸ジエステル化されたキサントシン誘導体が良好な収率で生成する条件を見出すことができ、キサントシンの2位カルボニル基のリン酸化反応の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、水酸基と6位カルボニル基を適切に保護したキサントシン誘導体を合成し、これを基質とする2位カルボニル基のリン酸ジエステル化反応の開発に成功した。また、キサントシン誘導体合成の過程では、酸性水溶液中で安定なトリイソプロピルシリル基による水酸基の保護、6位への選択的な導入が可能なp-ニトロフェニルエチル基が保護基として最適であり、2位アミノ基のジアゾ化―加水分解では、最小限の水の存在下酢酸中亜硝酸ナトリウムを反応させる条件が最適であることも見出した。加えて、2位カルボニル基のリン酸ジエステル化の反応条件の検討では、イノシンの6位カルボニル基に対するリン酸化とは異なりCSOによる亜リン酸トリエステル中間体の酸化を長時間行うことで収率が劇的に向上することも見出した。この様な検討の結果、これまでに報告されていなかったキサントシン誘導体の2位カルボニル基のリン酸ジエステル化反応を開発することができた。核酸塩基のカルボニル基に対するリン酸ジエステル化反応の開発例は数少なく、本反応の他には研究代表者らが以前開発したイノシンの6位カルボニル基に対するリン酸ジエステル化反応が報告されているだけである。以上の成果を考えると、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の様に、これまでの研究によって、これまでに報告例のないキサントシン誘導体の2位カルボニル基のリン酸ジエステル化反応の開発に成功した。そこで、平成30年度は、まず様々な官能基を持つリン酸ジエステル基の導入について検討する。次に、得られたリン酸ジエステルが生体内に存在するリン酸ジエステル加水分解酵素に対しどの程度安定であるのかについて評価する。安定性が不十分である場合、リン酸ジエステル加水分解酵素に対する耐性が高いことで知られるチオリン酸誘導体の合成とその酵素安定性の評価を試みる。次に、蛍光色素、抗がん活性を有するヌクレオシド誘導体を有するリン酸ジエステル基の導入について検討し、得られた化合物のGMP合成酵素に対する応答性について調査する。更に、アデノシン一リン酸 (AMP) 化してAMP-XMPを合成し、GMP合成酵素によってGMPへと変換されることを確かめる。
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