研究課題/領域番号 |
17K05933
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小崎 紳一 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40280581)
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研究分担者 |
阿座上 弘行 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40263850)
木股 洋子 (有賀洋子) 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60255429)
永野 真吾 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60286440)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヘム |
研究実績の概要 |
病原性細菌の中には生存に必須の鉄を感染先の宿主に存在する血中ヘモグロビンのヘムから獲得する仕組みを活用しているものがある。ヘム鉄の獲得は、(1) ヘモグロビンから遊離したヘムを菌体外に分泌されたヘモフォアがつかむプロセス (2) 外膜、内膜を膜貫通タンパクを介してヘムが通り抜けるプロセス (3) 細胞質に到達したヘムから鉄を引き抜くプロセスからなる。さらに、鉄は、生存に必須であると同時に活性酸素種の発生を促進してしまうため、菌体内の鉄濃度を適正に保つための仕組みも存在する。本研究では、「胃腸炎の原因細菌の一種であり、通性嫌気性細菌に属するエルシニア菌のヘムならびに鉄の代謝プロセスの全容を解明し、そのプロセスを人為的に狂わせて生育、感染を阻止すること」を目的とする。特に(3)に焦点を当てて実験を進めている。 初年度に ヘムからの鉄抽出・再利用に関与する遺伝子・タンパクの同定を行い、それらタンパクの機能同定・解析に取り組む。並行して、こうしたタンパクをコードしている遺伝子の欠損株の作製し表現型を検証する。こうした結果をもとに、ヘムの取り込み、ヘムからの鉄の引き抜きに関与しているタンパクの阻害剤を探索し細菌の生育阻害の検証する計画である。タンパクの構造解析、分光法による解析も駆使して、阻害の仕組みも解明していく予定である。様々な病気や感染リスクの高い高齢者が増える社会を迎え、病原性細菌の感染を抑えることは重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、エルシニア菌が菌体内に取り入れたヘムを分解する酵素が、 (1) これまでに知られていたヘムオキシゲナーゼとは全く異なるHmuSと呼ばれる酵素によってヘムが好気的にβ-, δ-biliverdin分解されること (2) ヘムの分解に必要な電子は ferredoxin NADP+ reductaseを介してNADPHから供給されること (3) HmuSをコードしている遺伝子近傍にコードされている酵素がβ-, δ-biliverdinをbilirubinに還元する酵素をコードしていること を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヘムの分解、並びに、分解物の還元を触媒する酵素が明らかにできたので、それを阻害する物質の検索に取り組む予定である。阻害の仕組みを詳細に理解するために、これらの酵素の構造解析、分光法による分析も進めていく計画にしている。さらに、平成29年度の研究でヘム分解に必要な電子供与系として、ferredoxin NADP+ reductase(FNR)が汎用されていることを示唆する結果が得られている。病原性細菌のFNRも新たなターゲットして阻害剤の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたよりも消耗品(培地用試薬、タンパク精製用カラム)の経費が少なくて済んだため差額が生じたが、次年度以降に必要となるこうした消耗品に充てる計画にしている。
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