研究課題/領域番号 |
17K05938
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋山 好嗣 東京理科大学, 基礎工学部教養(長万部), 講師 (40640842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核酸医薬 / 分子標的医薬 / 刺激応答性高分子 / ドラッグデリバリーシステム / ナノバイオマテリアル |
研究実績の概要 |
1. 分子標的医薬オリゴマー(モデル)の合成:分子標的医薬オリゴマーのモデルとして、4-アミノベンジルアルコールを基本骨格とするポリ(カルバメート)の重合検討と末端機能化を試みた。4-アミノベンジルアルコールとフェニルクロロフォルメートから得られるフェニル((4-ヒドロキシメチル)フェニル))カルバメートをモノマーに、ジラウリン酸ジブチルすず(IV)を触媒とした重合検討から、オリゴマー化の反応が進行することを確認した。また、得られた重合体に4-フェニル-1-ブタノールを加え、さらに反応させた結果、高分子末端にブチルフェニル基を定量的に導入できることが核磁気共鳴スペクトルを用いた構造解析から明らかとなった。
2. pH応答性末端修飾剤の合成:当初の計画にない新たな試みとして、ポリ(カルバメート)誘導体に広く適用可能な末端修飾剤の分子設計とその合成を試みた。すなわち、光に応答するポリ(カルバメート)誘導体を基本骨格としたナノ構造体とすることを計画していたが、DDSへの展開を考慮し、エンドソームから細胞質への効率的な移行を達成できる分子設計に着手した。具体的には、4-アミノベンジルアルコールとシトラコン酸無水物がつくるアミド結合が弱酸性の条件下で加水分解できる構造的機能を有する設計とした。そして、両者をジエチルエーテル-酢酸エチル混合溶液中で反応させ、生じた沈殿物をろ過および減圧乾燥にて回収した。その結果、薄層クロマトグラフィーおよび核磁気共鳴スペクトル解析から、酸解離型の末端修飾剤の定量的合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4-アミノベンジルアルコールを基本骨格とする末端反応性ポリ(カルバメート)誘導体の合成は、固相合成から液相合成に変更し、条件検討を重ねた結果、定量的かつ大量合成法が可能であることがわかった。それ以外の成果としては、pHに応答可能な末端修飾剤の合成に成功した。すなわち、分子標的医薬オリゴマーのモデルとした末端機能性ポリ(カルバメート)誘導体は、末端に様々な機能分子の導入が可能となる構造的特徴をもつ。当初、光照射に応答する機能分子の導入を計画していたが、臨床応用を視野に入れると、弱酸性条件をもつ細胞内エンドソームでの効率的な薬物リリースが極めて重要となる。そこで、弱酸性条件下で加水分解が進行する末端修飾剤の新規合成法を新たに設計し、その合成を試みたところ、定量的な合成に成功した。本修飾剤は、ポリ(カルバメート)誘導体に広く適用できることから、DDSのみならず、機能性高分子材料としての汎用性が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
液相合成にて得られた末端反応性ポリカルバメート誘導体の有用性を示す一例として、オリゴDNAとのコンジュゲート体を合成し、透析法を用いて表層にDNA密生層を有するナノ構造体を作製する。さらに、このDNAコンジュゲート体の合成手法を拡張し、酸解離型の修飾剤が末端に導入されたナノ構造体を合わせて合成する。弱酸性条件下におけるナノ構造体の分解挙動を高速クロマトグラフィーと光散乱法で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成方法の見直しから、当初予定していた固相合成から実用性が高い液相合成による新規合成法に着手した。このことから、固相合成による試薬類の購入を最小限に抑えたために残額が発生した。
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