研究課題/領域番号 |
17K05938
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋山 好嗣 東京理科大学, 基礎工学部教養(長万部), 准教授 (40640842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キャリアフリーDDS / DNA密生層 / 自己崩壊性高分子 / コンビネーション治療 |
研究実績の概要 |
1. 自己崩壊性高分子を内殻に有するDNA密生型ナノ構造体の作製:アミノベンジル骨格を有するポリ(カルバメート)誘導体(1)は、フェニルブチル基が加水分解されると1,6-脱離反応を起こし、末端から順次モノマーをリリースする構造的な特徴を有する。このようなポリマー1と核酸医薬(DNA)からなるコンジュゲートが得られると、水溶液中でDNA密生層を外殻としたナノ構造体の形成が期待できる。そこで、ポリマー1 (重合度26)の末端水酸基をカルボニルイミダゾール(CI)化して、アミノ基末端を有するオリゴDNAと固相担体上で反応させた。その後、in situによるミセル化を試みたところ、動的光散乱(DLS)測定により、流体力学的直径が約100 nmの単分散なミセルの存在が確認された。このことから、DNA密生層を有するナノ構造体の作製に成功した。
2. DNA密生型ナノ粒子によるDNA親和性薬物の切断経路の目視識別:当初の計画にない新たな試みとして、DNA密生層を薬物スクリーニングに活用できる基盤技術の創出を試みた。すなわち、抗がん性抗生物質であるブレオマイシン(BLM)のDNA切断部位を二重鎖(ds)DNA密生層に組み込み、内殻を自己崩壊性高分子から金ナノ粒子(GNP)としたナノ構造体(dsDNA-GNP)は、BLMで処理すると高イオン強度下であっても粒子の凝集が抑制され赤色を保持した。一方で、BLMとは異なるDNA親和性薬物で処理されたナノ粒子は、金ナノ粒子がもたらす色調変化をもたらした。さらに興味深いことに、BLMの切断経路である酸化的な切断および塩基脱離をDNA密生層に組み込んだモデル目視アッセイから、BLMによる酸化的なDNA切断を目視で判定できることを実証した(特願2018-159028)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリ(カルバメート)誘導体の末端水酸基は、カルボニルジイミダゾールと容易に反応し、活性化体へ変換することが可能となった。また、本機能性高分子は固相担体に修飾した末端アミノ化DNAと混ぜるだけで再現よくDNAコンジュゲートを与えることがわかった。着目すべきは、水に難溶性の合成高分子を親水性であるDNAとのコンジュゲートが得られる本技術は、様々な末端反応性高分子のDNAコンジュゲートを作製する有用なツールとなり得る。得られたDNAコンジュゲートは、in situ法にて自己崩壊性高分子を内殻としたDNA密生型ナノ構造体を与えた。さらには、DNA密生型金ナノ粒子を利用するとDNAを切断メカニズムにもつ抗がん剤の切断経路を目視で検出できることに成功した。これまでに、蛍光核酸塩基を用いた部位特異的なDNA鎖切断の蛍光検出が報告されている。しかしながら、切断経路を蛍光強度で区別できる状況には至っておらず、高度な分子切断機能をもつ抗がん剤の簡便・迅速な目視による一次スクリーニングの構築が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. 自己崩壊性高分子を内殻に有するDNA密生型ナノ構造体の作製:申請時の実験計画に従い、得られたDNA密生型ナノ粒子を10%血清含有の緩衝溶液に加え、ナノ粒子の安定性を評価する。血清処理後のナノ構造体に界面活性剤を加えた後に、電気泳動にてDNAの分解効率を評価する。また、ヒト肝がん由来細胞株(HuH-7)を用いた毒性試験を実施する。毒性評価は、LDH(乳酸脱水素酵素)アッセイをおこなう。さらに、酸加水分解型の新規修飾剤(2017年報告)を導入したナノ構造体とすることによりエンドソームからの細胞質移行が可能なインテリジェント型ナノ粒子を調製し、DNA密生層がもたらすアンチセンス効果を培養細胞(HuH-7細胞)にて評価する。
2. DNA密生型ナノ粒子によるDNA親和性薬物の目視探索:当初の計画にない新たな試みとして、4-アミノベンジルアルコールの骨格を有するカンプトテシン(CPT)誘導体の目視探索を実施する。得られたCPT誘導体のオリゴマーを合成し、これを内殻とした核酸医薬を密生層にもつキャリアフリーDDSの機能評価を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入に満たない残額のため次年度使用額とした。
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