本研究課題は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)で多用されている脂質や合成高分子で作製されたナノキャリアがもつ潜在的な毒性を根本的に解決するための基盤技術の創出、すなわちキャリフリーDDSの開発を目的としている。最終年度は、DNA密生型ナノ構造体の高機能化および目視薬物探索に向けたコロイド分散性の物性評価を試みた。
1. 自己崩壊性高分子を内殻としたDNA密生型ナノ構造体:アミノベンジル骨格を有するポリ(カルバメート)(PC)誘導体の核酸医薬修飾体(PC-oligoDNA)は、水溶液中で自己組織化により流体力学的直径が約100 nmの単分散なミセルを再現よく調製できることを実証した(特願2019-164912)。また、末端水酸基のカルボニルイミダゾール化(CI化)反応の最適化を試みたところ、反応直後に濃縮工程を加えることでCI基を73%の導入率で得ることに成功した。さらには、PC末端に光応答性の2-ニトロベンジル基の導入も可能となったことから、光に応答して自己崩壊を誘導できる刺激応答性のDNA密生型ナノ構造体とすることが期待できる。
2. DNA親和性薬物の目視探索:二重鎖DNA固定化金ナノ粒子(dsDNA-GNP)の分散状態を示す赤色由来の吸光度(A530)と凝集状態を示す紫色の吸光度(A700)の比(A530/A700)を用いて、dsDNA-AuNPのコロイド分散性の経時変化を可視吸光スペクトル測定により評価した。結果として、5分程度で著しく吸光度比が減少し、dsDNA-AuNPの凝集が促進されていることがわかった。dsDNA-GNPの色変化をもたらすBLMの下限濃度は8 μM程度に存在していた。本濃度域は通常の固相合成法で得られる化合物群で調製可能な濃度であり、今後の簡易検査に求められる実用的な知見を得た。
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