研究実績の概要 |
シャペロニン(GroEL/GroES)は、複合体内部にそれぞれ直径約5nmの空洞を持つタンパク質性ナノカプセルである。GroELに結合したATPの加水分解が反応サイクルのタイマーとして働き、GroESの解離と内包物を放出するため、DDSキャリアに応用できると考えた。 GroEL/GroES複合体は、1つめの空洞にADPを用いてGroESを結合させ、後からもう片方の空洞にATPを用いてGroESを結合させると、異なる物質をそれぞれの空間に順番に閉じ込めることが可能であると考えられた。そこで、2種の金属ナノ粒子を用いてGroEL、GroES、内包物A、内包物Bからなる四者複合体を形成して、TEM、HPLC、STEM-EDSで内包物の確認を行った。この結果は、1分子のGroEL/GroES複合体が2種の異なる薬剤を閉じ込めて運ぶキャリアとしての応用の可能性を示すことができた。 ATP加水分解活性低下型変異体GroEL(D52,398A)と、核移行シグナル配列付与型GroES変異体を蛍光色素で標識し、GFPを内包させてCHL/IU細胞に添加したところ、GroEL/GroES /GFP複合体は細胞添加後5時間でに細胞質、7時間で核に到達した。次に、細胞核への核酸輸送への応用を検証するために、Alexa488標識DNAを粒径2.2 nmの金ナノ粒子に吸着させ、GroEL(D52,398A)/GroESに内包させ細胞投与した。蛍光顕微鏡観察の結果、核酸結合金ナノ粒子/GroEL/GroES複合体は添加後8時間の細胞内に蛍光シグナルが見られ、14時間後も形態の変化無くシグナルを維持した。核酸結合金ナノ粒子のみを投与した場合では、試料が培地中で凝集し細胞内到達はなったことから、GroEL/GroES複合体が細胞内移行に寄与することが示された。
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