研究課題/領域番号 |
17K05943
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
張 功幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50347423)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機化学 / 核酸化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、求電子ラジカル前駆体や光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸を合成し、それらを活用してオリゴ核酸上でのピンポイント官能基化反応を実現することを目指す。その実現のために本年度は以下の研究を行った。 求電子ラジカル前駆体を連結したオリゴ核酸の合成を検討した。その合成戦略は、研究当初の計画に従い、求電子ラジカル前駆体とオリゴ核酸とのコンジュゲート反応を選択した。求電子ラジカル前駆体としては、ブロモマロン酸エステルとコンジュゲートユニット(アジドや活性エステル)を持つアナログやブロモジフルオロ酢酸エステルとコンジュゲートユニット(アジドや活性エステル)を持つアナログを合成した。一方、トリフルオロメチルラジカル前駆体となるユニットの合成は困難であった。 合成に成功した求電子ラジカル前駆体については、末端アルキン、高度に歪みを持ったアルキンや末端アミンを持つオリゴ核酸とコンジュゲート反応を行った。種々検討したが、求電子ラジカル前駆体自体の分解や分解したコンジュゲートオリゴ核酸などが得られ、目的とする求電子ラジカル前駆体を連結したオリゴ核酸を得ることはできなかった。 一方で、光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸の合成も開始した。結果、オリゴ核酸に連結可能なユニットを持った新規イリジウム錯体の合成に成功するとともに、本イリジウム錯体とオリゴ核酸とのコンジュゲート反応にも成功し、目的とする光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸の合成を達成した。 また、ヌクレオシドを用いたモデル反応において、光酸化還元触媒とブロモジフルオロ酢酸エステルを用いた反応により、低収率であるが望みの官能基化が進行することは確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度以降に計画していた光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸の合成を前倒して実施し、その合成を達成した。合成に成功した光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸の金属種とオリゴ核酸の組み合わせはこれまで報告例のないことから、今後新機能の発見に繋がる可能性がある。一方で、本年度計画した求電子ラジカル前駆体を連結したオリゴ核酸の合成を達成することができなかったこと、オリゴ核酸上でのピンポイント官能基化反応の実施に至らなかったことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は以下の研究を実施する。 合成した光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸と標的核酸上での化学変換反応を行う。まずは、光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸と標的核酸の複合体形成能を評価し、十分な安定性を持つことを確認する。次いで、ラジカル前駆体ユニットや反応性部位を持つ標的核酸を利用し、光酸化還元触媒を連結したオリゴ核酸の連結部のリンカー長や構造などを検討し、効率的反応を達成するための最適化を試みる。 一方で、反応性ユニットを連結したオリゴ核酸の合成を行う。その際、これまで検討してきた反応性ユニット連結オリゴ核酸の合成が難しかった場合は、より広範な反応性ユニットを対象にした連結オリゴ核酸の合成を行う。 研究期間終了時までに、当初計画していたオリゴ核酸上での官能基化反応の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
オリゴ核酸上でのピンポイント官能基化反応の実施に至らなかったため、その分の消耗品費が残金が生じた。次年度にその検討を行うことから、その際に使用する。
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