昨年度までに開発した2種のイリジウム触媒を連結したオリゴ核酸のうち、より高い還元能を持つオリゴ核酸を用いて、ヨードウラシル塩基を持つ標的一本鎖核酸の還元反応(ヨードウラシルからウラシルへの変換反応)をさらに検討した。その結果、効率は十分とは言えないもののヨードウラシルを1か所含むオリゴ核酸での還元に成功し、その生成物を質量分析により確認することができた。このことから今回合成したオリゴ核酸に連結されたイリジウム触媒の反応部位(ピンポイント修飾する上での反応位置)に関する情報を得ることができた。 化学反応性ユニットを持つオリゴ核酸についても昨年度合成したものを利用して、アシル基転位を試みた。反応性と安定性のバランスの制御が困難であったため、高活性な5-アミノメチルチミン塩基を含む一本鎖オリゴ核酸を標的としたところ、アシル基転位が進行しやすい導入部位を決定することができた。一方で、当初計画していた求電子ラジカル前駆体を連結したオリゴ核酸の合成についてもさらに検討を重ねたが、その安定性の問題からかその合成を達成することはできなかった。 最終的に当初計画した2本のオリゴ核酸を利用した標的オリゴ核酸のピンポイント官能基化反応の実現はできなかったが、光酸化還元イリジウム触媒連結オリゴ核酸を用いたヨードウラシル塩基の還元や5-アミノメチルチミン含有オリゴ核酸へのアシル基転位反応に成功することができた。さらに、ピンポイント官能基化反応を実現するために、銅触媒を連結したオリゴ核酸や安定なラジカル種を持つオリゴ核酸の合成にも成功した。今後引き続き、オリゴ核酸のピンポイント官能基化の実現に向けた研究を進めていく予定である。
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