研究課題/領域番号 |
17K05944
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70369114)
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研究分担者 |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 脂質 / ナノ材料 / 薬理学 / 動物 |
研究実績の概要 |
がんの転移を制御することは、がん治療において最も重要な戦略の一つである。複合脂質膜(ハイブリッドリポソーム:HL)は、それ自身でヒト培養がん細胞に対して顕著な増殖抑制効果および担がんモデル動物に対する治療効果を示し、正常動物に対しては無毒性であり副作用がないことを報告している。また、制がんメカニズムが、アポトーシス誘導に起因する可能性を見出している。そこで本研究においては、抗がん剤を全く含まないHLを用いて、がんの中でもとりわけ悪性で転移能の高い大腸がん、肺がん、リンパ腫、骨肉腫などの転移に対する効果的な化学療法を目指す。 本年度は、大腸がん(HCT116)細胞を用いた同所移植モデルマウスに対するHLの治療効果およびがん検出作用を検討した。HLの静脈内投与により大腸がんマウスモデルにおける相対的盲腸(腫瘍)重量の顕著な減少が得られた。HE染色を用いた盲腸組織切片における組織学的分析によって腫瘍サイズの減少が確認された。TUNEL染色により、大腸がんマウスモデルにおけるHCT116細胞のアポトーシス誘導が観察された。蛍光プローブ(ICG)封入HLの静脈内投与後の大腸がんモデルマウスの腫瘍への蓄積が観察された(Drug Deliv., 25, 1192(2018)。 乳がん(MDA-MB-453)細胞の同所性移植モデルマウスに対するHLの治療効果およびがん検出作用を検討した。HLの静脈内投与により、乳がんモデルマウスにおける相対腫瘍重量の顕著な減少が得られた。TUNEL法により、腫瘍縮小効果がアポトーシス誘導によるものであることを明らかにした。HL/ICGの乳がん細胞に対する顕著な蓄積が観察されたが、正常乳腺細胞に対しては蓄積しなかった。乳がんモデルマウスの腫瘍へのHL/ICGの著しい蓄積が観察された。(Anticancer Res., 38, 5645(2018))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、抗がん剤を全く含まないHLを用いて、がんの中でもとりわけ悪性で転移能の高い大腸がん、肺がん、リンパ腫、骨肉腫などの転移に対する効果的な化学療法を目指している。 本年度は、大腸がん(HCT116)細胞を用いた同所移植モデルマウスに対するHLの治療効果および腫瘍への選択的蓄積を検討した。in vitroにおいて、HCT116細胞の増殖をアポトーシス誘導による抑制した。in vivoにおいてHLの静脈内投与により大腸がん同所移植マウスモデルにおける相対的盲腸(腫瘍)重量の顕著な減少が得られた。HE染色を用いた盲腸組織切片における組織学的分析によって腫瘍サイズの減少が確認された。TUNEL染色により、大腸がん同所移植マウスモデルにおけるHCT116細胞のアポトーシスの誘導が観察された。蛍光プローブ(Indocyanine green; ICG)封入HLの静脈内投与後の大腸がんモデルマウスの腫瘍への蓄積が観察された(Drug Deliv., 25, 1192(2018)。 乳がん(MDA-MB-453)細胞の同所性移植モデルマウスに対するHLの治療効果および腫瘍への蓄積を検討した。HLの静脈内投与により、乳がんモデルマウスにおける相対腫瘍重量の顕著な減少が得られた。TUNEL法により、腫瘍縮小効果がアポトーシス誘導によるものであることを明らかにした。HL/ICGの乳がん細胞に対する顕著な蓄積が観察されたが、正常乳腺細胞に対しては蓄積しなかった。乳がんモデルマウスの腫瘍へのHL/ICGの著しい蓄積が観察された。(Anticancer Res., 38, 5645(2018))。 以上のように、HLの大腸がんおよび乳がんの原発巣での制がん作用による抗転移効果が得られ、当初の計画通りおおむね順調に研究課題は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り研究を進め、(1)HLの調製およびin vitroでの細胞増殖抑制効果、(2)HLのアポトーシス誘導解析、(3)HLのin vitroでの転移・浸潤抑制効果、(4)がん転移モデルマウスに対するin vivoでの転移・浸潤抑制効果、(5)正常動物を用いた体内動態試験を実施する。(6)HLのin vitroでの転移・浸潤抑制メカニズム解析、(7)in vivoでの固形腫瘍のアポトーシス誘導観察、(8)in vivoでの固形腫瘍の免疫染色による抗転移メカニズム解析、(9)正常動物に対する安全性試験、(10)担がんマウスを用いた体内動態試験を実施する予定である。 これらの結果から、抗がん剤を全く含まないHLを用いて、がんの中でもとりわけ悪性で転移能の高い大腸がん、肺がん、リンパ腫、骨肉腫などの転移に対する効果的な化学療法を目指す。
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