研究実績の概要 |
狙った成分の選択的分解、分子量になるように切断して高付加価値化するリサイクルを開発する事を目的とした。実施した研究の成果としては、 平成29年度は、照射した可視光の時間ならびに熱処理温度の最適化を図る事で、PS中に重量比で10%添加したHBCDを約94%分解率で選択的に分解する事に成功した。分解後のPSは分子量の低下はなかったが、動力学的測定からスチレンモノマーがグラフトしたPSが生じ、力学的特性の低下が生じた。この欠点については、下記に記した本年度の検討で克服した。 平成30年度は、HALSを添加する事により、望む時に分解(自在分解)してリサイクルを可能とする水性ポリウレタン(WBPU)の開発を行った。可視光領域に吸収帯を持ち、自己溶解性を持つため、物質中に残存しないZnOを光触媒として用い、ソフトセグメントであるポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)部分を多く含み、HALSとドーマント結合を形成している成分を選択的に得る事に成功した。得られた成分が反応性のオリゴマーとしてリサイクルできる事も確認した。 最終年度の研究成果としては、ポリスチレン(PS)の難燃性の向上に使われてきた残留性汚染物質であるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を、抽出操作無しに、直接、選択分解させること試みた。方法としては、可視光応答型光触媒と光に対しては安定であるが熱処理によってラジカルを生成するヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を用い、光・熱によりラジカルを制御する事でPS内部のHBCDを選択的に分解させる事を行った。その結果、選択的に約80%のHBCDの分解に成功した。分解後のPS部のリサイクル性も力学試験で評価検討とした。その結果、力学物性も元のPSの90%の水準を維持を確認、この成果は論文に投稿した(Polym. Deg. Stab. 166, 40-49,2019)。
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