研究課題/領域番号 |
17K05950
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
木口 倫 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70457761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗インフルエンザ薬 / 代謝物 / PPCPs / 河川水 / 流出挙動 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究代表者らが開発した固相抽出法-同位体希釈-LC/MS/MS法を用いて河川水中での抗インフルエンザ薬のタミフルとその代謝物および4種の医薬品(カフェイン,カルバマゼピン,トリクロサン,トリクロカルバン)の濃度レベルと負荷量の経月変化を明らかにするため,都市小河川(下流域)での非流行期(4~11月)と流行期(12~3月)における実態調査を行った。また,対象とした河川流域での季節性インフルエンザ流行の経年変化のパターンを明らかにするため,感染症情報センター(秋田県)が一般公表している「インフルエンザ発生動向調査」の過去10年間のデータ(2006年~2016年)を取得し,その特徴を解析した。 調査の結果,タミフルと代謝物の濃度レベルはそれぞれ,数百pg/L~数ng/Lと数百pg/L~数百ng/Lの範囲で検出された。これらは流行期のみ検出され,使用時期が反映されていることが示唆された。4種の医薬品の濃度レベルは,数百pg/L~数千ng/Lの範囲で検出され,特にカフェインは他の医薬品に比べ高かった。カフェインは年間を通じて検出され,特に冬季に濃度レベルおよび負荷量が増加する傾向がみられたことから,使用量の増加あるいは排出源の処理レベルの低下等の影響が示唆された。 過去のインフルエンザ発生動向調査の解析の結果,流域内での季節性インフルエンザの患者発生数(定点合計値)は,平均的には当該年の第40週後半から第50週の間に最初の報告が確認された後,翌年の第1週から急増し,増減を経て第20週前後までに終息するパターンであった。一方,定点ごとにみると患者発生人数の増減は定点合計値のものと異なるパターンがみられ,流域内での流行状況の推移を把握するには定点ごとの患者発生数の情報も不可欠であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,河川水中でのタミフル以外の4種の医薬品に加え,研究代表者らが別途開発済みの固相抽出-誘導体化-GC/MS/MS法による20種の医薬品類についても実態調査を行い,分析ならびに解析を進めている。また,当初平成30年度に予定していた複数の都市下水路を対象とした調査対象医薬品類の流出特性(濃度レベルと負荷量)に関する調査として,本年度の河川水調査と並行して(1)都市小河川流域内の主要な都市下水路排水吐の選定,(2)選定地点での非流行期(8~11月)と流行期(12~2月)における実態調査も実施し,その分析と解析も進んでいる。このように,平成30年度計画で実施予定であった調査の分析と解析が先行していることから,概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,本年度の河川および都市下水路での医薬品類の濃度レベルと負荷量に関する実態調査の検討結果を踏まえ,引き続きこれらの実態調査を継続する。また,本年度に取得したタミフルと代謝物およびその他の医薬品類の濃度や負荷量と季節性インフルエンザ患者数との関係を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実験補助が事情により休暇取得したため、その分の人件費の残額である。次年度は人件費または物品費として使用する計画である。
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