研究課題/領域番号 |
17K05952
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青山 忠 日本大学, 理工学部, 准教授 (90349960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ワンポット合成 |
研究実績の概要 |
本年度は、初めに種々の脂肪族アルコールを用いた異種アルコールのカップリング反応による置換オレフィンの合成について検討を行い、この反応を種々の脂環式化合物や複素環化合物合成へ応用する可能性を検討した。 異種アルコールのカップリング反応はアルコールとして1級アルコールを用いるとカップリング反応は進行しなかった、2級アルコールを用いた場合にはベンジル型アルコールを用いたときに目的の反応が進行したが非環式2級アルコールを用いた反応では対応するエーテルが生成し、環状脂肪族アルコールを用いた反応ではオレフィンが生成する知見が得られた。この結果を踏まえてインダン類(脂環式化合物)の高立体選択的新規合成について、アルコールとしてtert-ブチルアルコールおよびtert-アミルアルコールを用いて検討したところ、種々のベンズヒドロールから10種類程度のインダン類が短時間において高収率かつ高立体選択的に得られることを確認した。 検討途中で環状脂肪族アルコールから生成したオレフィンは、我々の先の研究より、容易にニトリルオキシドと反応してイソオキサゾリン誘導体を生成することが知られていたので次年度以降の類似した計画をアレンジしてイソオキサゾリン誘導体のワンポット合成の検討も併せて行った。例えば、シリカゲル担持硫酸水素ナトリウム存在下α-ニトロケトンとtert-ブチルアルコールを加熱攪拌すると、α-ニトロケトンからニトリルオキシドが、tert-ブチルアルコールからイソブテンがそれぞれ生成され、これらが系内で双極子付加反応を起こすことで、イソオキサゾリン誘導体が生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・種々の脂肪族アルコールを用いたカップリング反応による置換オレフィンの合成検討の知見を当初予定よりも早く得ることができたことから、30年度より検討予定であったインダン類の立体選択的合成法の開発に着手することが可能となった。 ・脂環式アルコールを用いた反応である程度の脱水反応が進行してオレフィンが系内に存在することを確認できたことから、当初予定外の合成手法で新しいイソオキサゾリン誘導体の合成法の開発に成功した。 ・この手法の検討で得られた知見は、30年度以降に予定していた「酸存在下二種のアルコールおよびα-ニトロケトンの三成分からイソオキサゾリンのワンポット合成」に有用なものである。
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今後の研究の推進方策 |
・イソオキサゾリン類の合成 酸存在下、二種のアルコールおよびα-ニトロケトンの三成分からイソオキサゾリンのワンポット合成を行う。酸の作用により、二種のアルコールは置換アルケンを系内で生成し、並行してα-ニトロケトンはニトリルオキシドに変換される。これらが系内で環化付加反応をすることでイソオキサゾリンが生成する新規合成経路の開発を行う。置換オレフィンはアルコールから容易に生成すること、また、酸存在下アルケンとα-ニトロケトンからイソオキサゾリンを与えることは、我々の先行研究により実証されている。系内で各々の反応を阻害する要素がないことを来年度先ず確認したのちに、様々なイソオキサゾリン誘導体のワンポット合成を試みる。
・クロマン類の新規合成ルートの開発 現在までに、酸存在下tert-ブチルアルコールおよびo-ヒドロキシベンズヒドロールを反応させると2,2-ジメチル-4-フェニルクロマンが中程度の収率で得られることを確認していることから、30年度は、①様々なo-ヒドロキシベンズヒドロール類を用いたフェニルクロマン類の合成、②種々のo-ヒドロキシベンジルアルコールを用いたクロマン類の合成、および、③種々のアルキルアルコールとo-ヒドロキシベンズヒドロールを用いた多置換クロマン類の合成について検討を行う。特に生成するオレフィンと反応生成物の立体選択性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度重点的に行う予定であった置換オレフィンの合成検討が想定よりも早く(安価で)終了したことから、11万円程度の次年度使用が発生した。この約11万円は、次年度研究の物品費として研究用の試薬を購入する。
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