研究実績の概要 |
地球温暖化対策として、二酸化炭素の有効利用は急務の課題であるが、二酸化炭素とエポキシドからの環状カーボネートの合成は、二酸化炭素を炭素源として利用する有効な手法の一つである。我々は、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、tブチルテトラメチルグアニジンの3成分を利用する触媒システムが、環状カーボネートの合成において、常温・常圧下でも有効に働くことを前年度に見出している。本年度は、3成分の組み合わせについて種々検討し、更なる触媒活性の向上を試みた。その結果、塩化亜鉛の代わりに塩化ニオブを、tブチルテトラメチルグアニジンの代わりに7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンを用いた場合に、活性が向上することを見出した。さらに、その使用量比についても検討した結果、スチレンオキシドと二酸化炭素からのスチレンカーボネートへの変換を、常温・常圧下、効率よく行うことに成功した。ヨウ化亜鉛-塩化ニオブ-7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンから成る本触媒は、煩雑な触媒の調製を必要とすることなく、市販の3成分を混合するだけで、本変換反応に利用できる。また、本法は、加温・加圧下で行う従来法に比べて、よりエネルギー消費を抑えた変換法である。 今後、二酸化炭素とバイオマスからの機能性材料を創製するに当たり、スチレンオキシド以外にも本法を適用し、基質適用範囲に関する知見を得る。
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