研究実績の概要 |
本研究課題において積層膜を利用してCO2光燃料化を進めてきたが、詳細な反応経路を知るためには炭素源を明らかにすることが最重要との中間結論に至った。そのため、まず積層しない光触媒について(i) 反応ガス中の13CO2, (ii) 空気から触媒に吸着した12CO2, (iii) 触媒調製過程に触媒中に混入した炭素種, (iv) いずれかの過程で触媒に吸着したCO2以外の有機物、いずれから光還元化合物が生ずるのか、厳密におさえることにした。
光触媒を探索したところ、酸化チタンを含む光触媒では酸化チタン合成・触媒調製過程で含炭素化合物を一切使用しない場合でも、13CO2 + H2からの光触媒反応試験を行うと12CH4を中心に生成した。よってivの寄与が大きく、それ以上の反応経路の解明を断念した。一方、銀ナノ粒子をドープした酸化ジルコニウム光触媒を用いると、主に13COが生成した。よってiの寄与が大きいが、一割強の12COも副生した。そこで13CO2との交換反応を行うと、2時間で交換平衡に達し、気相の13CO2と12CO2の比は、光還元して生成した13COと12COの比とよく一致した。よって12COはii由来で生成したことが分かり、Ag-ZrO2は全てCO2をCOに光還元し、不純物の影響(iii, iv)は無視できた。
以上の同位体ラベルした13CO2光燃料化の経時変化の報告は、本研究が初めてである。CO2 + moistureでも光触媒反応試験を実施したが、水が単独で分解する過程が支配的だった。これは紫外可視光照射に基づく局在表面プラズモン共鳴由来で363 K程度まで加熱された銀ナノ粒子表面が関与していると考えられる。そこで、マグネシウムイオンを光触媒中にドープするとCO2を捕捉することでCO2 + moisture下でもH2生成からCO生成へと光燃料化を進められることが分かった。
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